ケンカする2人の間に入って一件落着させる第三者はどのように仲裁しているのか。渋谷のワインバー店主の林伸次さんは、かつて酔った客とトラブルになった際の経験を基に「お互いの言い分を聞いて、どちらの肩も持たず、双方が納得できる落とし所を見つけることができる人が世の中でいちばん強い人」という――。

※本稿は、林伸次『おじさんになっても』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

グラスを保持する男のバーテンダーの手
写真=iStock.com/MaximFesenko
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仲裁できる人が、いちばん強い

僕がやっているバー、以前は朝4時まで営業していました。深い時間になると、お客様がみなさん2軒目や3軒目で、すっかり酔っ払っているので、いろんなトラブルがありました。

あるとき、カウンターに座ったカップルの男性のほうが、「もっとちゃんと説明しろ」と僕にからんできたので、早めに帰ってもらおうと思い、「すいません。お代は結構なので、お帰りいただけますか」と伝えたんです。今まで飲んだ分をお店が持ち、頭を下げてお願いするわけですから、たいていの人は「わかった、二度と来るか」と捨て台詞を残して帰ってくれます。

警察を呼ぶしかないかと思ったそのとき

でも、そのときは違いました。「どういう意味だ?」とさらにからんできたうえに、お連れの女性も一緒になって「そうよ。このバーテンダー、どういうつもりなの?」と騒ぎ始めたんです。

僕が「すいません」とひたすら謝っていると、その男性がカウンターの上にあったボトルを僕のほうに投げつけてきました。幸い当たらなかったのですが、僕の後ろのグラスが「ガシャーン!」と割れてしまいました。

警察を呼ぶしかないかと思ったそのとき、テーブルで飲んでいた2人組の男性のお客様が立ち上がってくれたんです。ひとりの方が太い声で「暴力はいけないなあ」とボトルを投げた男性をいなしてくれました。ふっと場の空気が変わりました。するともうひとりの方も立ち上がって、「まあまあ、落ち着いて。いったいどうしたんですか?」と、男性と僕の間に入ってくれたんです。