コメ価格の高騰は何が原因なのか。コメ不足への不安が市場全体に広がったためだという見方がある。本当にそうなのか。元農水官僚で武蔵野大学国際総合研究所研究主幹の山下一仁さんは「2025年産米は豊作で、民間在庫も過去最高に達した。それでも価格が高止まりしているのは、市場心理と需給逼迫によるのではない。価格を高止まりさせているのは、全く別の原因である」という――。
左・東京都千代田区大手町1丁目のJAビル(写真中央)、右・鈴木 憲和農林水産大臣
左:東京都千代田区大手町1丁目のJAビル(写真=J o/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons)、右:鈴木 憲和農林水産大臣〔写真=農林水産省(MAFF)/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

真犯人は「消費者のパニック心理」なのか

プレジデントオンラインに「JA農協でも農水省でもコメ農家でもない…2026年度もコメの価格を吊り上げ続けている“真犯人”」という記事を見つけた。

“真犯人”は誰と言うのだろうかと興味を持って読んでみたら、私が書いた記事に対する批判記事だった。書いたのは元JA農協勤務の野菜農家・SITO.氏だ。この記事でSITO.氏は“真犯人”を次のように結論付けている。

今回あえてコメ価格高騰の「真犯人」を挙げるとすれば、それは特定の組織や個人ではなく、「需給逼迫が生み出したコメ不足への恐怖や不安が、市場全体へ広まったこと」ではないでしょうか。

市場経済において、価格というのは、誰か一人が自由に決められるものではなく、売り手と買い手の期待や不安、将来的な予測までが織り込まれて形成されるものです。特にコメのように収穫が年1回しかなくて短期間に供給量を増やせない農産物で、しかも主食だと「不足するかもしれない」という心理だけで価格が大きく跳ね上がります。今回の米価高騰は、まさにそうした市場心理が需給逼迫と結び付いて生じた典型例といえるでしょう。

(出典:プレジデントオンライン「JA農協でも農水省でもコメ農家でもない…2026年度もコメの価格を吊り上げ続けている"真犯人"」2026年7月30日公開)

供給が十分あれば価格は下がるはずだ

確かにパニックによる買い占めは一時的に価格高騰を招く。たとえば、オイルショックでのトイレットペーパーやコロナ禍のマスクなどの例だ。

しかし、供給が十分にあることがわかればパニックは落ち着き、価格は元の水準に落ち着く。現在のコメのように24年産から25年産へと年をまたいで、しかも供給が増えているのに価格が下がるどころか上がったままなかなか下がってこないという状況は、パニック心理によるものとは考えられない。