私が農水省に入りコメ問題(食糧管理制度)を担当した1977年以降、不足するかもしれないという心理だけで米価が大きく跳ね上がったことは経験したことがない。それ以前も1918年のコメ騒動までさかのぼらないとないのではないか? 過去にそのような例があるなら示してほしい。
これまでも(25年産米のように)JA農協の在庫操作により豊作でも米価が上昇するというイレギュラーな年もあったが、おおむね米価は需要と供給で決定されてきた。供給が増えると下がるし、減ると上がる。需要は毎年減少してきたので、減反を強化しなければ米価は低下する。上がるのは人為的な操作があるときだ。
「平成のコメ騒動」をはるかに上回る価格上昇
今回よりも1993年の平成のコメ騒動の時のほうが消費者はパニックになっていた。
冷夏・日照不足などで作況指数が74まで低下し(生産量は1992年1055万トンから93年783万トンに272万トンも減少)、戦後例のない大不作となった。「不足するかもしれない」どころか不足は現実だった。
当時コメの総消費量は1000万トンで今の700万トンより4割も多く、食生活に占めるコメの比重は今より高かった。それなのに、政府の備蓄米は23万トンしかなかった。
消費者は列をなしてスーパーや米屋の店頭に押しかけた。当時は食管制度の下にあり価格形成の仕方が現在と必ずしも同じではないが、コメに対する物価統制令は1972年に適用を廃止されており、小売り段階の価格形成は自由だった。
また、政府米の割合はどんどん低下し流通の大半を占めていたのは自主流通米(93年で73%のシェア)で、JA農協が卸売業者に販売する際の価格形成は、今の相対取引よりも公正で自由だった(自主流通米価格形成センターにおける入札で決定)。しかし、図表1にあるように、当時の価格上昇は現在ほどではなかった(対前年比新潟コシヒカリ3.1%、宮城ササニシキ3.5%の上昇)。

