ハードワークはどれくらい健康に悪いのか。元厚生労働省官僚で慶應義塾大学専任講師の佐藤豪竜さんは「日本では月平均80時間の残業が過労死ラインとされているが、残業は1時間でも血管を傷つけ、脳卒中のリスクは徐々に高まる」という――。

※本稿は佐藤豪竜『働き方の科学 エビデンスが明かす「健康」も「生産性」も手に入れる方法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

MRA(磁気共鳴血管造影)スキャンで脳の血管
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労働時間の「二極化」が進む日本

日本人は働きすぎという印象をもっている方がいるかもしれませんが、最新のデータで見ると、必ずしもそうとは言えません。

確かに、1985年の日本の年間総実労働時間は平均2093時間で、世界でも圧倒的な長さでした。しかし、労働基準法の累次の改正によって労働時間規制が強化されるとともに、非正規労働者の割合が増え、平均の労働時間は次第に下がっていきました。

2024年の日本の年間総実労働時間は平均1617時間で、アメリカの1796時間やイタリアの1709時間よりも短い水準となっています。

一方で、週48時間を超えて働く長時間労働者の割合は、日本は依然として高い水準にあります。特に男性は20.4%が長時間労働で、ドイツの6.4%と比べて3倍以上の割合です。ここから、日本では労働時間の二極化が進んでいることがうかがえます。

長時間労働が健康に悪いことは、すでに数多くの研究から明らかになっています。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのミカ・キヴィマキ教授らは、欧米の約60万人を対象としたメタ分析を行い、長時間労働と心血管疾患リスクの関係を調べました(※注1)。

(※注1)Mika Kivimäki at al.(2015) Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data for 603,838 individuals Lancet, 2015 Oct 31;386(10005):1739-46