「過労死ライン」以下でもリスクは上がる
論文では1週間あたり35~40時間を標準的な労働時間、週55時間以上を長時間労働として定義し、比較が行われました。週55時間以上と言うと、1日あたりの残業時間は3~4時間ということになります。
分析の結果、長時間労働をしている人は標準的な労働時間の人と比べて、7~8年のうちに虚血性心疾患を発症するリスクが13%高く、脳卒中のリスクが33%高いことが示されました。
キヴィマキ教授らは、1週間の労働時間と心血管疾患リスクとの関係をさらに細かく分析しました。図表1を見てください。虚血性心疾患については明確な傾向は見られないものの、脳卒中については労働時間が週40時間を超えると徐々にリスクが高まる傾向が確認できます。
日本では、2~6カ月の平均で月80時間を超える残業が過労死認定基準(過労死ライン)とされています。1週間の労働時間に換算すると約60時間です。
重要なのは、残業時間が過労死ラインに達するといきなり脳卒中のリスクが跳ね上がるわけではないということです。図表1に示されたとおり、残業は1時間であっても血管を傷つけ、脳卒中のリスクは徐々に高まります。
「やりがい」に燃える人ほど要注意
このように、病気の原因の量が増えると、連続的に病気のリスクが高まっていく関係を、疫学の専門用語で「用量反応関係」と呼びます。薬の量を増やすと、増やした分に比例して血圧などの値が下がるような関係も用量反応関係です。
労働時間が所定の週40時間を超えると、脳卒中のリスクとの間に用量反応関係が見られることから、残業は1時間でも健康に悪いと言えます。

