プロ向けに開発された商品が、一般消費者に広まることがある。製菓業界向けのアルコール製剤「パストリーゼ77」もそのひとつだ。パストリーゼ77は、約40年前に製菓業界向けに開発された商品だった。どのようにして広まったのか。ドーバー酒造神奈川厚木工場生産技術部部長の渡邉昌弘さんと、ドーバー洋酒貿易業務統括部営業企画課の田島理恵さんに話を聞いた――。

製菓のプロ向けに開発された

プロ向けに開発したニッチな商品が、一般消費者の間で大ヒットすることがある。長年コツコツと製造してきたものがある日突然脚光を浴び、急成長を経て定番商品の座を獲得する――。1986年に発売されたアルコール製剤「パストリーゼ77」も、そんなサクセスストーリーをたどった商品のひとつだ。

開発・製造元のドーバー酒造は、洋酒の輸入事業を営むドーバー洋酒貿易の製造部門。国内工場でオリジナルの洋酒約200種を製造しており、その多くは洋菓子などの製菓用だ。顧客もパティシエや製菓企業などが中心で、業界ではよく知られた存在ながら、長らく一般消費者の間では無名だった。

パストリーゼも、本来は家庭向けではなく製菓のプロ向けに開発されたものだ。大きな特徴は、アルコール濃度が77%(容量パーセント)で除菌力が高く、かつ食品にも直接吹きかけられること。生産技術部部長の渡邉昌弘さんは「元々はケーキ屋さんのイチゴの防カビ対策商品として生まれた」と明かす。

「パティシエの方からイチゴがすぐカビてしまうという声を聞き、それなら食品に吹きかけられる除菌剤をつくろうと開発したのが始まりだそうです。当初は1Lや一斗缶といった大容量タイプのみを製造して、町のケーキ屋さんや洋菓子工場に納めていました」(渡邉さん)

ドーバー酒造 神奈川厚木工場 生産技術部部長 渡邉昌弘さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
ドーバー酒造 神奈川厚木工場 生産技術部部長 渡邉昌弘さん

「食品添加物」として販売

その成り立ちと同様に、原材料も一般的な除菌剤とはかなり異なる。「食品にかかっても安心で味を変えることもない」を目指して開発されたため、主原料はサトウキビ由来の醸造用アルコールと高純度の純水。いずれも酒づくりに使われるものと同じで、それを除菌剤に応用できたのは酒造会社だからこそだろう。

さらに、配合成分を工夫することで、アルコール除菌剤であり、かつ食品にかかっても問題ないという点から「食品添加物」としての販売が認められた。

だが、酒造会社の強みとノウハウを注ぎ込んで発売にこぎつけたものの、売れ行きはあまり芳しくなかったという。業務統括部の田島理恵さんは「最初はお客様にそこまで必要とはされていなかったようなんです」と苦笑する。

「当時の社会は今ほど衛生意識が浸透していませんでしたし、商品の認知度も低かったので営業には苦労したようです。お客様に紹介しても、『うちの店はそんなものが必要なほど汚くない』と反発されることもあったと聞きました」(田島さん)

左から「ドーバー パストリーゼ77 500ml〈スプレーヘッド付き〉、800ml〈置き型ポンプボトル〉、1L〈スプレーヘッドなし〉、5L〈ポリ容器〉
画像提供=ドーバー酒造
左から「ドーバー パストリーゼ77 500ml〈スプレーヘッド付き〉、800ml〈置き型ポンプボトル〉、1L〈スプレーヘッドなし〉、5L〈ポリ容器〉」