地方都市の人口減少が進む中、栃木県宇都宮市を中心に走る次世代型路面電車(LRT)「ライトライン」が予想を上回る利用者を集めている。フリーランスライターの小川裕夫さんは「ライトラインは単なる新しい公共交通ではなく、都市づくりを考えるうえで重要な事例になり得る」という――。
宇都宮駅
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「餃子」に並ぶ新しいシンボル

JR宇都宮駅から隣接する芳賀町の工業団地までの約14.6キロを結ぶ新型路面電車(ライトライン)が2023年8月に開業した。開業時から大きな話題を集めたが、それらの世評には「今さら、路面電車?」といった疑問視とも冷視とも受け取れる趣旨もあった。

ライトラインの整備費用は約684億円。これは、計画当初に計上されていた458億円を大きく上回る。整備費用が上振れした大きな理由は、資材費・人件費をはじめとする物価高によるものだ。社会環境の変化という無帰責事由とはいえ、莫大な税金を投じている以上は行政の責任は免責されない。

それら費用対効果も含めて、ライトラインに対する冷ややかな声は歳月の経過とともに少しずつ打ち消されていく。

ライトラインは開業してから多くの利用者を集め、開業から3カ月で早くも累計利用者数が100万人を突破した。

昨今、鉄道の新線開業は少なくなった。旧会社を引き継ぐといった事情がなければ、鉄道の新会社が設立されることは稀としか言いようがない。ライトラインはそうした希少性も相まって注目されたが、そうした一時的な話題性だけではなく、堅調に利用者を集めた。

開業から1年後には500万人突破

開業から約1年後にあたる2024年9月には、延べ利用者数が500万人を突破。この数字に栃木県・宇都宮市といった行政関係者のみならず、あちこちの自治体関係者から驚きの声が上がった。なにより鉄道雑誌の編集者ですら、その快進撃を「それなりに需要はあると思っていたが奇跡的」と評するほどだった。

驚くべきことは利用者数ばかりではない。宇都宮市は同年にライトライン沿線における移動時間の変化を調査・発表した。同調査では、ライトライン開業前と比べて通勤では平均9分、通学では平均25分の短縮効果が確認されている。

ライトライン建設の大義名分だった渋滞の緩和に関するデータは示されていないが、それまで自動車・バスで通勤通学していた人たちがライトラインへと移動手段を切り替えたことで所要時間が短縮されたであろうことは推測できる。ライトラインによる時間短縮効果が周知されることにより、通勤手段をマイカーからライトラインへと切り替える人が増える相乗効果も期待でき、それは課題だった渋滞の緩和にもつながる。

斬新的な車体デザインとカラーリングにより、ライトラインは路面電車のイメージを刷新した(2023年9月)
撮影=小川裕夫
斬新的な車体デザインとカラーリングにより、ライトラインは路面電車のイメージを刷新した(2023年9月撮影)

そしてライトラインは、今年8月に満3年を迎えた。3年を迎える直前に累計の利用者が1500万人を突破した。これは想定していた需要を大きく上回り約7カ月も早い達成で、もはやライトラインは餃子と並び宇都宮のシンボル的なアイコンにもなりつつある。