市全体の人口は減るのに沿線は5600人増

アークタウン宇都宮がオープンしたことによって、平石―芳賀・高根沢工業団地間にも沿線外需要を生み出す要素が追加された。ライトラインは公共交通の整備によって道路の渋滞を解消することが第一議にあった。そして、開業によって沿線開発が進むことへの期待も多分に含まれていた。

それら2つよりも大きな効果をもたらしたと考えているのが、ライトラインの開業によって宇都宮という都市がコンパクトシティ化を進めている点にある。

宇都宮市を中心に組織される「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」の調査・統計によると、宇都宮市全体の人口は2016年に52万2000人でピークを迎え、10年後の2025年には約8000人減少した。

その一方、新型路面電車の沿線は2012年から2025年までに約5600人が増加している。微妙に集計期間が異なるものの、これは開業によって沿線への集約が進んだことを示唆している。

昨今、日本全体の人口が減少し、それに伴って上下水道・ガス・電気・道路・通信網といった公共インフラ、小中学校や図書館・公民館といった公共施設を隅々まで整備できなくなっている。

青森の事例が示す街づくりの難しさ

高度経済成長期やバブル期は地価の高騰によって東京・大阪といった大都市部のみならず、地方都市でも中心部の地価が上昇した。住宅地は土地代が安価な郊外に求めるしかなく、それが都市を無秩序・無計画に広がるといったスプロール化を促進した。

市民生活を維持することを使命とする行政にとって、都市のスプロール化は郊外までインフラを整備することになり、それは非効率かつ非経済的だった。そのため、行政には悩ましい問題となっていた。

人口が増加している時代だったら都市のスプロール化は受け入れざるをえないが、人口が減少している昨今において、都市のスプロール化は自治体財政を蝕む重荷にもなっていた。そこで、打開策として政府や地方自治体は都市機能を集約させるコンパクトシティを2000年前後より推進してきた。

コンパクトシティを推進すれば、効率的に公共インフラを整備できる。しかし、郊外の住宅地に居住している住民を強制的に移住させるわけにはいかない。コンパクトシティは中長期にわたる計画として取り組まれていた。そのなかでも、青森県青森市は早い時期からコンパクトシティを打ち出していたことからモデル都市とされてきた。

そうした政府・行政の予想に反して、日本の人口は加速度的に減少した。予想以上の人口減少は、青森市が取り組んだコンパクトシティが目立った成果をもたらすことができなかった。都市計画・都市政策は中長期的な観点から評価する必要があるため、現段階で青森市のコンパクトシティを失敗と断じることは早計だが、青森市に限らず全国各地でもコンパクトシティの取り組みが思っていたより効果を上げられていない、進んでいないことは明らかだ。