「9割を中国依存」がもたらした悪夢

供給網のチョークポイントを握ることは、強力な外交カードになる。

その威力を、日本はまず影響を及ぼされる側として思い知った。米シンクタンクの欧州政策分析センター(CEPA)などが振り返るように、2010年、中国は外交摩擦を背景に日本へのレアアース(希土類)輸出を禁じた。当時の依存度は最大90%。半導体から電子機器、自動車まで、製造業の土台が大きく揺さぶられた。

これを機にトヨタやソニーをはじめとするメーカーと政府が一体となり、「脱リスク化」に舵を切った。中国以外では世界最大のレアアース生産企業であるオーストラリアのライナス・レアアースとの提携を軸に調達先を多角化し、2025年までに依存度を約60%にまで引き下げた。

こうして、かつて依存の危うさを身をもって知った日本。半導体分野では自ら、供給網の急所であるチョークポイントを握る側に回った。

錆びた金属の質感のうえに描かれた五星紅旗と日章旗
写真=iStock.com/btgbtg
※写真はイメージです

中国はまだ“日本の水準”に追い付けない

CEPAによると、日本企業は最先端の回路描画に用いるEUV(極端紫外線)リソグラフィ用化学品やシリコンウェーハ、世界シェアの約30%を占める製造装置など、サプライチェーンの要所を広く押さえている。日本企業はいまや、半導体材料の供給を外交カードとしても活用しつつある。

実際、日本はこの外交カードをすでに切っている。2019年、前年12月に発生した韓国海軍による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射事案や徴用工問題で深刻化する日韓対立を背景に、日本は半導体製造に欠かせない化学品の韓国向け輸出規制に踏み切った。

対中国でも、日本は同じカードをさらに明確な形で切っている。セミコンダクターインサイトが報じるように、日本は2023年から2024年にかけて半導体製造装置の輸出規制を強化し、ディスコや東京精密の中国向け供給を制限した。

現在、日本企業は供給先の軸足を、アメリカ・台湾・韓国といった同盟国・同志国へと移しつつある。中国は国内で、半導体基板となるウェーハの薄化技術の自主開発を急ぐが、日本勢が磨いてきた精密工学の水準に追い付くには、相当の時間がかかるとみられる。

素材と装置の支配力を維持しながら、日本は「失われた領土」の奪還にも動き出している。半導体チップの製造能力を再び高めようとする試みだ。

かつては半導体の世界シェアで過半を占めたが、設計でアメリカに、製造で台湾に首位を譲った。バンク・オブ・アメリカは、日本政府がこの巻き返しに向け、総額10兆円に上る補助金・優遇措置を打ち出したと伝えている。

この壮大な計画を担う旗手の一人が、日本の半導体メーカーのラピダスだ。