イラン攻撃が長期化する中、エネルギー自給率が低い日本は苦境に立たされている。高市首相に危機の舵取り役は務まるのか。東大名誉教授の井上達夫さんは「選挙中だけでなく、選挙で圧勝した後も「人気が第一」のイメージ操作ばかりで、肝心の問題からは逃げ続けている。そんな彼女に首相の資格はない」という――。

憲法改正なくして日本の安全保障はない

憲法9条は自衛隊という日本の「戦力の現実」と「戦力は保持されず行使されない」という虚構に立脚した法体制の間の根本的矛盾を生みだしている。

この9条を抜本的に解決する憲法改正なくして、立憲主義的に統制されたかたちで、日本の主体的安全保障体制を確立することは不可能である。

私は長年にわたりこのことを論じてきた。本年3月11日にプレジデントオンラインで公開された、改憲問題に関する高市首相の姿勢を批判した拙稿で、この問題に触れている(参照、「東大名誉教授『高市首相のやり方は姑息だ』…タカ派のはずが『憲法9条改正』から逃げ回るズルさの正体」、「『反政府デモの鎮圧』に『基本的人権の停止』…高市ブログから発掘された『憲法9条改正私案』のヤバい中身」)。

本稿の前編でも、この問題が孕む危険性について敷衍ふえんした。

朝鮮戦争を受けて再軍備した後70年以上にわたり、戦後日本はこの問題を放置し続けてきた。しかし、国際情勢は激変し、日本の安全保障環境も緊迫化している。2022年2月以降のウクライナ戦争、2023年10月以降のガザ戦争は、国際法を無視した軍事的暴力が跋扈ばっこする現実を世界に突き付けている。

さらに、戦後国際秩序の主導国であり、日米安保体制下で日本の同盟国である米国も、第2次トランプ政権下で、放縦化・無責任化してしまった。新年早々、ヴェネズエラ侵攻、2月末以降はイラン侵攻と、国際法を公然と蹂躙する侵略に走っている。

特にイラン侵攻は、長期化・泥沼化する危険性を孕み、石油輸入の90%以上を中東に依存する日本にとっても深刻な危機である。

日本はイラン攻撃に加担している

前編で批判した「9条があってよかった」という9条礼賛言説は、さらに深刻な事実の歪曲をはらんでいる。日本が法律上、米国のイラン侵攻に軍事協力できるだけでなく、既に軍事協力してしまっているという事実を隠蔽しているのである。以下、この点を説明する。実は、集団的自衛権行使解禁以前ですら、ヴェトナム戦争からアフガニスタン戦争・イラク戦争に至るまで、日本は他国に対する米国の軍事侵攻に対し、在日米軍基地の提供や兵站支援などを通じて、戦時国際法上、米国の交戦行動に対する協力・支援とみなされる加担をしてきた。

迷彩服に、日米それぞれのワッペン
写真=iStock.com/petesphotography
日本はイラン攻撃に加担している(※写真はイメージです)