中国に住む外国人は、人口14億人のうちわずか0.05%しかいない。それでも中国国民は、新設された外国人若手科学技術者向けの「Kビザ」に激しく反発した。SNSにはインド人を「不衛生」「ゴキブリ」と蔑む書き込みが殺到し、ハッシュタグの閲覧数は2日間で5億回に達した。習近平政権が火消しに躍起になる中、海外メディアはその根底に中国国内の深刻な雇用危機があると報じている――。
インドと中国の国旗の紛争概念
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中国人が「Kビザ」に猛反発

2025年9月下旬、インドのニュース番組でキャスターがこう言い放った。「ゴタゴタはすっ飛ばして、荷物をまとめましょう。チャンスはたっぷりありますよ」

移民として成功したいなら、手早く中国へ向かうべきだとする発言だ。折しもアメリカのドナルド・トランプ大統領は、H-1Bビザの新規申請に対して10万ドル(約1600万円。5月27日現在のレート、1ドル159.34円で換算)の追加手数料を課し、ビザ取得が困難になった。これを受け、代わりに類似の「Kビザ」を発行する中国へ向かえばいいという、いかにも軽口じみたコメントだった。

Kビザは外国人若手科学技術者に向けたビザで、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の若年層外国人に限った、新たな査証制度である。カタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラはその最大の特徴を、雇用主による身元保証(スポンサーシップ)を必要としない点にあると解説する。

中国では高度専門人材向けの「Rビザ」が2013年に導入されていたが、受け入れ組織の身元保証が不可欠だった。Kビザにはその縛りがなく、より幅広い層に門戸を開く補完的な制度として新設された経緯がある。

だが、冒頭のニュース番組の切り抜き動画が中国SNSのウェイボー(Weibo/微博)で拡散すると、瞬く間に炎上した。ただでさえ若年層の雇用が厳しい中国に、外国人労働者は来てほしくないとの反応が巻き起こった。

働き口のない大卒者の怒り

Kビザを新設した中国政府の狙いは、ここ数十年にわたる高度な専門的人材の流出を取り戻すことにある。

北京・長江商学院のタオ・ジーガン教授はアルジャジーラに対し、「中国は1980年代から2010年代にかけて先進国に人材を奪われ続けてきた」と指摘する。

コロナ禍の後、中国は外国人向けの受け入れ策を相次いで打ち出してきた。Kビザもそのひとつに過ぎなかったと、米経済ラジオ番組のマーケットプレイスは伝える。

複数回の入国や長期滞在を認める柔軟な枠組みだが、資格要件の詳細はまだ明らかにされていない。現時点で条件とされるのは、学士号以上を保持していること。中国国内で言う本科(4年制大学)卒に相当する。

一方、中国国内では大学を卒業していても、修士号や博士号がなければ職に就きにくいのが現実だ。「ハードルが低すぎる」との批判も、すでにくすぶっていた。