中国当局が火消しに回る事態に
排外的な感情が渦巻くKビザ問題に対し、当局が相次いで火消しに回る事態となった。
Kビザで永住権が自動的に与えられるわけではなく、中国での就労権さえも保証されるわけではないと、北京ラジオ・テレビ局のドキュメンタリー・ディレクターである乔路晶氏は訴えた。Kビザ保持者は雇用主による招聘状がなくとも入国できるが、実際に就労するには従来通りの申請・審査プロセスを経る必要がある。
マーケットプレイスによると、中国政府の意向に沿った報道で知られる環球時報の元編集長・胡錫進氏も、「職のない海外の若者に向けた慈善事業ではない」と動画で火消しに回っている。
ついには、中国共産党中央委員会の機関紙である人民日報が動いた。論評記事を通じ、一部の中国国民が「政策を曲解し、荒唐無稽な主張で世論を惑わし」ていると批判し、「中国はかつてないほど人材を求めている」と強調した。製造業では約3000万人分の求人が埋まらないという政府の統計まで持ち出してみせ、インド人技術者に国内の雇用が奪われるわけではないと説得を試みている。
だが、人民日報はこの一手でかえって火に油を注いだ。ウェイボーでは、「Kビザは雇用に影響しないと言いながら、人材不足があるとも言う。つまり、移民を呼び込みたいのだろう」といった反発の声が相次いだ。説得のために持ち出した数字が、市民にはかえって不信を深める根拠として受け止められたのだ。
メディア評論家の項棟梁氏は、マーケットプレイスの取材に、中国国民の怒りの根底には職を奪われる恐怖があると指摘。「市民の目に映るのは、大卒者さえ良い仕事に就けず、低賃金で働く現実なのです」と語る。
若者の5人に1人は仕事に就けない
昨年8月、中国の若年失業率は18.9%に達した。CNNは、2023年12月以来の高水準だと報じている。
昨年の大学新卒者は、過去最多の1220万人。景気が冷え込むなかで、国内で就職口を奪い合っている状況だ。
2012年から2022年にかけて中国で高等教育を修了した者のうち、実に約半数がSTEM分野の学位を持つ。その数、約2400万人。自国にこれだけの理工系人材を抱えながら、なぜ外国人を招くのか。この疑問に答えない政権に、国民は怒りの矛先を向けた。
実際、体制寄りの論客でさえ、こうした現実との矛盾を認めている。
環球時報の元編集長・胡錫進氏はウェイボーで、「Kビザ論争の核心にある本質的な問題は、国内雇用市場の緊張と、若者が就職活動で直面する不安を反映していることだ」と指摘。「国内の雇用率を、とりわけ質の高い雇用の面で向上させることは、現下の統治にとって死活的に重要だ」と論じた。
胡錫進氏は中国共産党寄りのナショナリストの論客であり、本来ならば「Kビザの炎上は民意を歪曲している」などと述べて当局を擁護する立場のはずだ。だが、今回は上記の発言を通じ、炎上をネットの移り気な世論と片付けるべきではなく、国家政治の問題と捉えるべきであると、異例の警告を発した。

