首相官邸のXアカウントで公開された1本の動画が物議をかもしている。現役医師の木村知さんは「『まるでプロモーションビデオのよう』と非難を浴びているが、問題はそれだけではない。この動画には、安全上看過できない“非常に危険な行動”が含まれている」という――。
写真=時事通信フォト
避難所となっている熊本県氷川町の氷川中学校を視察し、住民らと意見交換する高市早苗首相(中央)=2026年8月3日

「まるでプロモーションビデオ」という批判

このところ、官邸や内閣広報官そして高市首相自身から発信される情報が、たびたび物議をかもしています。

直近では、8月3日に被災地の熊本入りした高市首相の視察活動が官邸のX公式アカウントに2分弱の動画として公開されましたが、これは被災地の実情を映し出したものではなく、BGM付きで被災者の困難とはあまりにもかけ離れた高市首相のプロモーションビデオにさえ見えるものであったことから、多くの非難をあびています。

これに先立つ7月20日(海の日)の夜10時過ぎ、高市首相が自身のXアカウントにアップした600字超という長文投稿にも、国内外から大きな驚きと批判の声があがりました。

高市早苗首相本人の公式Xに投稿されたポストのキャプチャ(@takaichi_sanae)。

この投稿によれば、高市首相は7月に入ってからの土日は骨太方針や成長戦略の資料読みや国会答弁準備に追われ、平日も家事をしながら明け方まで資料読みに費やすことになっていたといいます。首相自ら自身の「過酷な私生活」を赤裸々に発信したことに、多くの驚きの声があがりました。

さらに注目されたのが文章の後半部分の「今日のお休みは本当に有難く、久々に5時間も睡眠を取れた上(総理就任以来、0時間〜3時間睡眠が常態化)」との記述です。

一読した私は、思わず医師として「危ない」と感じました。この文章のなかに看過できない2つの大きな「危うさ」を見出したからです。

そこで本稿では、この高市首相による投稿のどこが危険であるのかを、医師の視点から論じてみたいと思います。

3時間睡眠の医師に命を預けるか

ところで、皆さんの職場では、睡眠時間をけずって仕事をしている人は「頑張っている人」として高評価されるでしょうか。それとも、時間の使い方や健康にかんする意識を欠いた「セルフマネジメントできない人」とみなされてしまうでしょうか。

もし、あなたの体にメスを入れようとしている外科医が「連日3時間睡眠での激務のなか頑張っている」と誇らしげに語っているのを聞いてしまった場合、あなたはその医師のオペを受けるでしょうか。それともその医師のオペを即座にキャンセルしようと思うでしょうか。

睡眠不足で連日働いているのが、一国の総理大臣であった場合はどうでしょうか。「国民のために寝る時間を惜しんで尽力してくれている」と感動するでしょうか。それとも「急に倒れて総理不在となってしまわないか、国の重要政策やデリケートな外交課題の判断を誤らないか」と不安になってしまうでしょうか。

「危うさ」の1つめは、この一国のリーダーたる高市首相の睡眠不足が常態化しているという点です。