研究結果「アルコール酩酊時に匹敵しうる」
言うまでもなく、睡眠時間は健康維持のためには非常に重要で、睡眠不足によってもたらされる「異常」は、たんなる「眠気」だけにとどまりません。
短期的には、強い眠気、疲労感、頭痛、だるさ、情動不安定がまず出ます。これらは経験者であればうなずけることでしょう。くわえて、集中しづらい、反応が遅い、判断が鈍る、ミスが増えるといったことも起こり得ます。
睡眠不足が慢性化すれば、高血圧や心筋梗塞、脳卒中といった循環器・脳血管疾患の増悪因子にもなり得ます。さらに2型糖尿病リスクや精神疾患リスクの上昇に加え、免疫・炎症系への悪影響も指摘されています。
つまり0~3時間の睡眠が常態化していると、もともと健康である人でさえ心身の異常を引き起こしかねませんし、基礎疾患を持っている人であれば、なおさら危険があるということになります。
これほどの睡眠不足であれば、健康面はもちろん、仕事をはじめとした社会活動への影響も甚大です。
私が2019年に上梓した『病気は社会が引き起こす~インフルエンザ大流行のワケ』(角川新書)では、医師の過重労働の問題も取り上げました。ここでは1997年と少し古い論文ですがDawson & ReidのNature論文を引用し、睡眠不足による機能低下がアルコール酩酊時のパフォーマンス低下に匹敵しうることを示しました。
その後の研究でも、17〜19時間の覚醒で一部の認知・運動機能が血中アルコール濃度0.05%相当(※)に達しうることも示されています。
※一般的に「ほろ酔い」といわれる状態。
リスクは「安全保障」にも…
NHLBI(米国国立心肺血液研究所)も、睡眠不足が学習、集中、反応、社会的機能を妨げ、人の感情や反応を読み取りにくくすると説明しています。
また、持続的注意、ワーキングメモリ、反応抑制、実行機能も傷つけられます。近年のレビューでは、一晩の睡眠剥奪だけでも持続的注意、反応時間、ワーキングメモリに悪影響が出るとされており、2025年のメタ解析では抑制制御や中核的実行機能全般への障害が示されました。
抑制制御とは、自分の衝動や習慣的な行動、誘惑を意識的におさえ、目的に合った適切な行動を選ぶための認知的能力(実行機能)のことを言います。
つまり睡眠不足によってこの制御が障害されると、衝動や行動にブレーキが利かなくなるリスクが高まる可能性があるのです。
もし高市首相の投稿が真実で「0~3時間の睡眠が常態化」しているのであれば、首相の行動や判断に大きな障害が生じかねません。高市首相の健康そのもののリスクにとどまらず、日本という国家にとっても非常に危険であると言わざるを得ないのです。
「危うさ」の2つめは、高市首相が自身の睡眠不足の常態化を、自国民だけでなく世界中のあらゆる人が読めるXというメディアに投稿してしまったことです。
ここまでお示ししてきたとおり、睡眠不足イコール「健康リスク」であり「社会的リスク」であることは今や世界の常識です。
これらのリスクにくわえて、高市首相自身の発信によって、日本のリーダーがこれらのリスクを抱えながら執務していることが全世界に広まるという「安全保障上のリスク」まで、わが国は背負うことになってしまったのです。
しかもこれらのリスクを高市首相自身が認知できていないとの疑いまで招く事態となってしまいました。

