東南アジア初の高速鉄道として2023年に開業したインドネシアの「Whoosh(ウーシュ)」。建設費は当初予算を80%超過し、年間数億ドルの赤字を計上。国鉄トップは「時限爆弾」と警告する。日本を退けて中国案を採用したインドネシアが直面する「解けないジレンマ」を、海外メディアが報じている――。
2023年10月5日、インドネシア・ジャカルタ バンドン高速鉄道 拡大写真
写真=新華社/共同通信イメージズ
2023年10月5日、インドネシア・ジャカルタの高速鉄道車両

時速350キロの新型車両、まばらな乗客

ある土曜の朝、真新しい高速列車の車内はしんと静まっていた。時速350キロの高速鉄道に乗客はまばらで、ただ空気を乗せて走っている。

インドネシア専門ニュースレター「アーキペラゴ・ノーツ」の記者が乗り込んだのは、首都ジャカルタと西ジャワ州の主要都市バンドンを結ぶ東南アジア初の高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」だ。中国製の赤い車体に、日本の新幹線を思わせる流線形。車内の速度計は時速350キロを示し、窓の外を熱帯の緑が飛ぶように過ぎていく。座席は清潔で、設備は申し分ない。

ただ、人がいない。見渡せば座席の8割が空席だ。乗車率はわずか15〜20%程度に過ぎない。週末の朝だというのに。数人の乗客がスマートフォンを構え、車内を撮影している。日常の足として乗っている様子ではない。

料金が壁になっている。エコノミー席で22万5000ルピア(約2080円、20日時点のレートで換算)。ジャカルタで3日は食べていける金額だ。ファーストクラスはその3倍近くもする。

在来線なら同じ区間を7万ルピア(約650円)で移動できる。同誌記者がジャワ島で話を聞いた人々のうち、Whooshに乗ったことがあるのは経済学教授と外交官の2人だけだったという。

予算80%超過で開業に漕ぎ着けた

香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは、Whooshの最終コストは約73億ドル(約1兆1600億円)に上ると報じる。

当初予算の40億ドル(約6360億円)を、約80%超過している。土地買収をめぐる紛争に、環境問題とコロナ禍が重なり、開業は予定より4年遅れた。