家選びに失敗しないコツはあるか。住まいるサポートの高橋彰社長は「機能やデザインだけではなく“性能”を見ることだ。耐震性、断熱性のほかに、もう一つ。制度化されていない、重要な指標がある」という――。

日本の新築住宅は「すき間だらけ」でも合法

「日本では、合法的に隙間だらけの家がつくれる」

驚かれるかもしれませんが本当です。

仮にあなたが、数千万円かけて新築した住宅がすきま風が入ってくるような“欠陥住宅”であっても、クレームの対象にはならない可能性が高いのです。

日本の住宅街
写真=iStock.com/Orthosie
※写真はイメージです

理由はいたってシンプルで、法律がないからです。

「そんな大げさな。法律がないだけで、業者がちゃんとやってくれているでしょう?」

残念ながら、そんなことはありません。これは、30年間あまり住宅事業に携わってきた筆者の実感です。

どれだけの“すき間”があるのかを確認されないまま、数千万円から1億円以上の高額な商品が売買されているのが住宅市場の現実です。

一方、欧米の多くの地域では、事情がまったく異なります。住宅は完成時に“隙間の量”(=気密性能)の測定が義務付けられており、一定の基準を満たさなければ是正が求められます。見た目がどれほど立派でも、一定以上の隙間があると「完成」とはみなされないのです。

筆者は、現在、結露のない健康・快適な住まいづくりをサポートする会社を経営し、日々、住宅の断熱・気密性能に向き合っています。本稿では、住宅性能の専門家の立場から、日本の住宅市場が抱えるこの「気密性能」の問題について読み解いていきます。

なぜ「気密性能」が重要なのか

断熱と気密は、しばしば混同され、断熱性能を高めるとそれに比例して気密性能も高まるとも誤解されがちです。ですが、この2つは全く別物です。

断熱とは、壁や窓を通じて熱が外に逃げるのを防ぐ性能です。いわば「熱の伝わりにくさ」を高める技術です。

一方、気密とは、建物のすき間を減らし、空気の出入りを制御する性能です。

どれだけ暖房で室内を暖めても、すき間が多ければ暖かい空気は外へ逃げ、冷たい外気が侵入してきます。

例えるなら、分厚いセーターを着ていても、その上に風を防ぐウインドブレーカーを着なければ、風が入ってきて寒さを防げないのと同じです。セーターの編み目が粗ければなおさらです。

断熱材の性能がいくら高くても、建物全体にすき間が多ければ、その効果は大きく損なわれてしまいます。

断熱性能が「熱の移動」を抑える技術であるのに対し、気密性能は「空気の移動」を制御する技術です。

この2つは独立した性能でありながら、実際の住環境においては密接に結びついています。

断熱性能については、諸外国に比べてとても緩い基準ではありますが、日本でもやっと2025年4月から建築物省エネ法により、新築住宅に断熱性能の基準を満たすことが義務付けられました。

ところが、冒頭でも触れたとおり、「気密性能」については、義務どころか基準すら定められていません。法制度上はどんなに隙間だらけでも、違法ではないので、クレーム対外。補償は期待できないのです。

断熱だけを強化しても、気密が伴わなければ、その効果は十分に発揮されません。

逆に言えば、気密性能は、断熱性能を「生かす」ための前提条件ともいえるのです。