健康リスクと直結している
メカニズムはわかりました。では、具体的にどんな問題が起こりうるのか、5つにわけて順番に見ていきましょう。
① 室内で寒暖差が出る
気密性能が低い住宅では、室内の空気は想像以上に頻繁に入れ替わっています。
その結果、暖房しても暖気が外へ逃げやすく、外から冷気が入り込みやすくなります。すると、暖気より重たい冷気が床付近に流れ込み、足元だけが冷えるといった現象が起きます。
② 家の中で寒暖差が出る
さらに問題なのは、家全体の温度ムラです。
断熱性・気密性がともに高い家であれば、リビングの暖房をつけているだけで、家全体が均一にあたたまります。隙間があれば、暖気は家の中にとどまってくれないので、暖房をつけているリビングは暖かくても、廊下や脱衣室は寒いということがおこります。
このような住宅は、「快適さ」の問題にとどまらず、健康リスクとも直結します。
特に冬場、暖かい部屋から寒い脱衣室や浴室に移動した際の急激な温度変化は、血圧の急上昇を引き起こし、ヒートショックのリスクを高める要因とされています。
結露からくる問題もあります。
室内外の温度差が大きい状態で、暖かく湿った空気が冷たい表面に触れると結露が生じます。これがカビやダニの発生を招き、アレルギーや呼吸器疾患のリスクを高めることも知られています。
電気代は上がり、資産価値は下がる
③ 空調の効率が下がる
気密性能の不足は、家計も直撃します。本来であれば一定のエネルギーで維持できるはずの室温が、空気漏れによって不安定になります。余分なエネルギー消費を招き、結果として電気代が跳ね上がります。
④ 計画換気が機能しない
もう一つ、見落とされがちなのが、換気への影響です。
現在の住宅では、計画換気によって室内の空気の流れを計画し、適切に入れ替えることが前提になっています。しかし、すき間が多い住宅では、計画された給気口ではない意図しないすき間から空気が出入りするため、換気計画が機能しないのです。
⑤ 建物寿命が縮まる
最後に、見えにくいながらも重要なのが「耐久性」への影響です。
気密性能が低い住宅では、空気とともに水蒸気も壁の内部に侵入しやすくなります。
本来、壁内は断熱材や防湿層によって適切にコントロールされるべき空間ですが、すき間が多い状態では湿気の流入を完全に防ぐことが難しくなります。
結果として発生するのが「壁内結露」です。
壁の内部で水分が結露すると、断熱材の性能は低下し、木材は腐朽しやすくなり、湿った環境を好むシロアリ被害のリスクも高まります。これらは外からは見えにくいため、気づいたときにはすでに構造体にダメージが及んでいることも少なくありません。
日本の住宅は、欧米に比べて極めて短寿命になっています。その要因の一つとして、壁内結露による劣化が挙げられています。
重要なのは、問題の多くが「後から発生する」という点です。
建設時には見えにくく、住み始めてから長期にわたって積み重なっていく。
本来、断熱と気密は「セットで初めて意味を持つ性能」です。
単なる快適性の指標ではなく、住宅のライフサイクル全体に関わる基本性能であるのにもかかわらず、日本では、断熱性能が制度的に義務化される一方で、気密性能はほとんど問われません。
このアンバランスこそが、日本の住宅が抱える根本的な問題の一つなのです。


