東京・秋葉原が様変わりしている。オタクの聖地の名物となった「メイド喫茶」が急速に数を減らしている。ジャーナリストの肥沼和之さんは「かつて100店以上あったが、30店もない。今では別の業態が急増し、客引きをするメイド姿の女性たちが現れるようになった」という。なぜ秋葉原の街は変質したのか。肥沼さんが現地を取材した――。(前編)
秋葉原・電気街でビラを配るメイド姿の女性(2008年6月10日、東京都千代田区外神田)
写真=時事通信フォト
名物だったメイド喫茶の数は急激に減少した〔写真=秋葉原・電気街でビラを配るメイド姿の女性(2008年6月10日、東京都千代田区外神田)〕

秋葉原が“歌舞伎町化”している

秋葉原が近年、様変わりしているという。戦後は電気街として栄え、2000年前後からアニメやゲームやフィギュアを扱う店や、メイド喫茶の普及によって「萌え」の聖地となり、オタクたちで賑わった。

だがここ10年ほどで、店舗も街並みも訪れる人も大きく変わったことが、複数のメディアやSNSで確認できる。なかには「治安悪化」「ぼったくり」「スラム街」「半グレ」など、過激な言葉も散見する。どのような街になっているのか、現地を訪ねた。

「まるで、歌舞伎町のようだ」

それが、約10年ぶりに秋葉原を訪れた筆者の感想だ。平日の18時ころ、JR秋葉原駅の改札を出て、メイン通りの中央通りを歩く。最初に目に飛び込んでくるのが、歩道にずらりと並ぶ「コンカフェ」ことコンセプトカフェの女の子たち。

コンカフェとはアイドル、悪魔、魔法使いなど、さまざまなコンセプトのもと、衣装や世界観を演出しているカフェのこと。カフェという名称だが、女性が接客してお酒を提供するという、バーの業態に近いことが多い。秋葉原で有名なメイドカフェもコンカフェに分類されるが、あくまで「カフェ」という違いがある。

色とりどりの衣装を身に着けた女性たちが、ほぼ距離を置かず、数百メートルにわたって並んでいる。これは、歌舞伎町の新宿TOHOビルの横、通称「トー横」でもおなじみの光景だが、コンカフェ嬢の数は秋葉原のほうがはるかに多い。

客引き禁止でも取り締まれない理由

「コンカフェいかがですか」
「そこのおにいさん、どうですか」

筆者も次々と声をかけられた。その脇を、「NO!客引き」というベストを着たパトロールが通り過ぎる。客引き禁止のはずなのに、堂々と行われているこの状況は何なのか? パトロールの人に聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「千代田区は客引きが禁止なのですが、あの子たちはビラ配りをしているだけだと言うんです。なので、注意することはできない。あからさまに腕を引っ張られるなどすれば、また違うのですが……」

さらに歩いていると、赤髪のコンカフェ嬢が筆者の前に立ちはだかって、「お願い、来てくれませんか?」と懇願してきた。話を聞くと、客を捕まえるまでは店に戻れず、もう1時間30分もこうしているという。長いときは6時間も客引きをしていたことがある、と続ける。

不憫になったのと、この機にコンカフェを体験してみたいと思い、付いていくことに決めた。料金は40分3000円で飲み放題付きとのこと。

古い雑居ビルにある15席ほどのお店で、メニューはドリンクやフードのほか、1500~2000円のキャストドリンクや、数万~数十万円のシャンパンもある。カウンター越しに女性がついてくれるシステムだ。