自己顕示欲の強さからくる熾烈な“推し文化”
蘭さんの店の客層は、観光客やオタクが多いという。オタクたちの飲み方からは、秋葉原独特の「推し文化」が見えてくると話す。
「オタクたちはお金を使うところがほかにないので、バンバン落としてくれるイメージです。イベントの日に、1本20万円のシャンパンを3本入れてくれたオタクがいました。キャストをものにしたいというわけじゃなく、自己顕示欲が強いんだろうなって。これだけお金を使ったぜ、っていうオタクたちの見栄の張り合い合戦みたいなのはありますね」
そしてキャストの多くも、コンカフェで働くことで、承認欲求を満たしていると蘭さん。実際に蘭さんも、コンカフェ内にあるステージで、かつて習っていたダンスを披露したいがために働きだしたという。そういえば、筆者が行ったコンカフェでも、「かわいい衣装を着たくて入店した」というキャストが何人もいた。
そもそもキャストの大半は、恋人がいないという。その理由を「彼女がコンカフェ嬢って、彼氏からしたら嫌じゃないですか。辞めてほしいって思う」と蘭さんは説明する。仮に彼氏に反対されても、コンカフェ勤務を選ぶ。その根底にあるのは、「何者かになりたい」という思いなのだろうか。
「男も女も、自己顕示欲をどこにぶつけたらいいか、わからない人たちであふれかえっています。秋葉はそういうのがたくさん観察できますよ」
蘭さんはそう締めくくった。
コンカフェに敗れ、メイド喫茶は壊滅状態
秋葉原名物のメイド喫茶は、2011年に100店舗以上あったとされる。だが蘭さんによると、現在は10グループ・30店舗も無いという。代わってコンカフェが台頭し、200店舗以上あるともいわれる(広義ではメイド喫茶もコンカフェの一種だが、ここではガールズバー形態の店をコンカフェとする)。
秋葉原の街を歩くと、駅から10分ほど離れた裏路地の雑居ビルにも、コンカフェが入っていた。コンカフェブームに乗じて、どこか物件が空くと、我先にとコンカフェが開業していったのではないかと想像できる。
コンカフェがここまで増えた理由は何か。要因のひとつが、秋葉原駅周辺の再開発だろう。2005年につくばエクスプレスが開通し、2006年の「秋葉原クロスフィールド」をはじめ、高層複合ビルが次々と竣工した。
それに伴って地価・賃料が上がり、通常の喫茶店の料金形態であるメイド喫茶は、経営が難しくなった。また、ネットショップの普及により、物販の店の閉業も増えた。そこへ、小さいスペースでも開業でき、「推し文化」もあって高単価が見込め、ガールズバーやキャバクラより低賃金でキャストを雇える「コンカフェ」が爆発的に増加したことが推察できる。

