リニア開業の「最大の壁」となっていた静岡県が、県内での着工を認める方針を示した。JR東海は年内の着工を目指す。ジャーナリストの小林一哉さんは「南アルプスを貫通するトンネル工事は未曽有の難工事と言われており、JR東海が公表している工期を実現するのは難しいだろう」という――。

ついに静岡知事が「GOサイン」

JR東海のリニア中央新幹線計画で東京・品川、名古屋間で唯一、未着工だった南アルプストンネルの静岡工区(8.9キロ)の工事がようやく、スタートすることになった。

静岡県の鈴木康友知事が7月7日の県議会全員協議会で、南アルプスの自然環境保全を担保する県自然環境保全条例に基づく自然環境保全協定を18日に、JR東海と結ぶことを明らかにした。

7月7日、リニア工事を容認した鈴木康友知事
筆者撮影
7月7日、リニア工事を容認した鈴木康友知事

併せて、JR東海が大井川流域の市町や利水団体などとの水資源の保全に関する合意形成が完了したことを受けて、懸案となっていた河川法の手続きを進めることも了解した。

静岡市が盛土規制法に基づくJR東海の申請を許可することも決まり、着工に向けて法的な障害はすべてクリアすることになった。

史上最難関のトンネル工事が待っている

鈴木知事が18日に河川法の占用を許可し、自然環境保全協定を締結すれば、JR東海は晴れて、静岡工区のトンネル工事に着手することができる。

そうなると、JR東海がいつ、静岡工区のトンネル工事を完了できるのかが最大の焦点となる。リニア開業の時期がはっきりと見えてくるからである。

鈴木知事は「これからが本番である」などと述べた。南アルプストンネルの静岡工区工事のハードルがいかに高いのかを示唆したようである

リニア南アルプストンネル総延長25キロのうち、山梨工区7.7キロ、静岡工区8.9キロ、長野工区8.4キロで、山梨、長野の両工区ではすでにトンネル本体工事が実施されている。

南アルプスのトンネル工事は大断層、大土被おおどかぶり(地表からトンネルまでの高さが250m以上あると大土被りで、土被りが大きいと地圧も大きくなる)が続き、技術的に極めて困難とされ、掘削するのはほぼ不可能とまで不安視されていた。

JR東海が南アルプスを貫通する直線ルートに決めたのは、過去に例のないほどの難しいトンネル工事とわかっていたが、技術的に大丈夫だという自信を持ったからである。南アルプストンネルで最大土被り1400mという前代未聞の工事が行われることから、日本トンネル史上、未曾有の難工事となると言われている。