インバウンドが増えても日本人の給与が上がらない
「外部不経済」という経済用語をご存じだろうか。
企業の営利活動などに伴い発生する弊害が、対価の支払いのないまま無関係な第三者に不利益や損害を与える現象を指す。かつての公害がそうだったように、当事者意識が薄く、因果関係の証明が困難なほど蔓延しやすい。今の日本で言えば、インバウンド観光と外国人労働者受け入れ、つまり日本社会と外国の「内外差」(文化や賃金水準の差)を利用した政策がその条件に当てはまる。政策からもたらされる利益と負担の行方が異なるのだ。
インバウンド観光では最前線の京都市の個人市民税収は、直近5年(19→24年)のデータで1175億円→1177億円とほぼ変化がなかった。経済的恩恵は関連事業者に限られ、京都市ですら一般市民にはその恩恵がほぼない。逆に伝統的な商店がインバウンド向けへと置き換わり、混雑やマナー問題、ホテル代の高騰といった現象は“観光公害”とも言われるほど。企業の利益追求の手段として活用した内外差の負の側面が、都合よく国民に転嫁される構図は外部不経済そのものだ。
外国人のいない秋田の方が最低賃金が増える
そして深刻なのは、政府や自治体が推進する「共生政策」、つまり人手不足解消を名目とした外国人労働者受け入れ政策(移民政策)だ。まずは、以下の図表1を見てほしい。賃金構造基本統計調査(厚労省)などをもとに、直近5年間で外国人参入の多い業界と少ない業界の賃金推移を比較したものだ。
外国人参入率が高い業種ほど日本人の賃金上昇が抑えられていることがわかる。安価な外国人労働力の供給が賃金上昇を阻害するという指摘は多々あったが、最も参入率が高い「飲食・宿泊サービス業」は物価上昇を反映した実質換算では4.2%ものマイナスであり、実際に「大きく下がっていた」のだ。
とりわけこの業界は、産業別賃金水準で最下位でもあり、外国人労働者が企業による低賃金環境維持の手段として作用している側面が強い。黒字リストラが進む事務職と比べても格段に悪い待遇であり、実態は「待遇が悪化した分野が人手不足」と表現するほうが正確だろう。同様に、飲食やコンビニのアルバイト時給に影響が大きい最低賃金の上昇率でも、外国人人口が多い東京より、外国人がほぼいない秋田のほうが高かった。


