血圧130台だから大丈夫だとは限らない
健康診断が間近に迫ると、数値の悪化が心配の種となる人も多いでしょう。ここでは健康診断で指摘されることが多い、血圧とBMIをめぐる不確実性について、お話ししたいと思います。
当然と思われていた数値が大きく覆った例として、有名なのは最初にもお話しした血圧です。数値は何度か見直され、「最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上で高血圧」という今の基準が、2000年の日本高血圧学会のガイドラインによって定められました。
最近は、多くの研究機関が130mmHg台の血圧についても高血圧と呼んでいいかを探る詳細な研究を進めています。なかには米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)のように、130mmHg台の血圧を2017年、「ステージ1高血圧」と正式に定義した団体も出てきています。
私のいる東大と横浜市立大学の研究チームも、ビッグデータを用いて「血圧130台の人が将来どれくらい心臓病になるか」を数十万人規模で解析しています。確かにこれまでの基準であった血圧140以上の人よりはリスクは低いものの、正常血圧の人に比べると、心不全で1.3倍、心房細動で1.21倍リスクが上がっているという事実が判明しています。
とはいえ、血圧130台の人はすぐに降圧薬を飲むようにしなさいということではありません。大事なのは「130台だから安心」と油断しないことです。心臓病を引き起こすリスクが高いことを自覚したうえで、食事や運動などの生活習慣に気をつける。そのサインとして、130mmHgという数値を利用してほしいと思っています。
ご存じのように、健康診断の定番指標であるBMIは、体重と身長から計算される国際的な体格指数です。体重(kg)を身長(m)の二乗で割る計算式で、その人の肥満度が数値でわかるようになっています。
日本肥満学会の分類によると、BMI18.5未満が低体重(痩せ)、18.5以上25.0未満が普通体重、25.0以上が肥満とされています。加えて統計的に最も病気になりにくいとされる標準体重(適正体重)のBMIは、22と定められています。
たしかに「22」という数字は、最も病気になりにくい基準として科学的根拠があります。とはいえ「22が絶対的な区切りである」かというと、そうは言い切れません。というのもBMIは体重と身長だけから出す数値だからです。人の体というのはとても複雑で、1つや2つの数値から何かを判断するのはむずかしいことが多い。筋肉量の多い人と少ない人では、適正体重も大きく変わってくるはずです。BMIだけで判断するのではなく、筋肉量と体脂肪率の3つをセットにして、適正体重を割り出すべきなのです。
「1日1万歩」に科学的根拠はない
特に高齢者の場合は、肥満より、痩せ体形のほうが注意が必要になるケースもあり、「BMI22を目指してダイエットしよう」と食事制限などをするのは危険です。
全身の筋肉量が減る症候群「サルコペニア」や、加齢によって心身が衰えてしまう「フレイル」に陥りやすくなるだけでなく、高齢期における「痩せ(BMI18.5未満)」は、免疫力の低下を招き、肺炎などの感染症にかかりやすくなるため、むしろ死亡リスクを跳ね上げるという報告もあります。
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