賢くお金を使うには、どうすればいいのか。それには未来のリスクをはかる「期待値」が役立つ。数字にだまされない人の考え方を、3つのシーン別に解説する――。

損のリスクを回避できる最も効率的な計算法

日常生活で、不確定な未来に対して何かしらの判断を下さなくてはいけない場面は多々あります。そのとき失敗の確率が高い判断をしなくて済むよう知っておいてほしいのが「期待値」の考え方です。

ビジネスで「お客様の期待値をコントロール」というように慣用的に表現することもありますが、期待値はもともと数学の概念です。ひらたくいえば確率的に導いた平均値のことで、具体的には「結果の値」と「その結果が起きる確率」を掛け合わせて、そのすべてを足した値を指します。サイコロを振って出た目が得点になるとしたら、「1点×6分の1」+「2点×6分の1」……「6点×6分の1」と足していって出た値3.5が「期待値」となります。

仕事で期待値なんて計算したことがないという人はもったいない。たとえばイベントを企画して、上司に「集客は何人できるか」と尋ねられたとしましょう。期待値を知らないAさんは、勘と経験から「200人強はいけます」と自信満々に答えました。一方、期待値を知っているBさんは、過去のデータからこうシミュレーションしました。

「快晴の確率は20%、その場合の集客は最高の400人。雨は20%で最低の100人。晴れから曇りが60%で200人。以上から期待値を計算すると、220人の集客が見込めます」

AさんもBさんも答えはほぼ同じです。ただ、説得力があるのは、数字の裏付けがあるBさんのほう。私が上司ならイベントはBさんに任せます。

期待値が計算できれば、損得も判断しやすくなります。イベントの総予算は20万円で、入場料は1000円だとします。集客が220人なら、入場料収入は22万円。イベント単体でかろうじて黒字が見込めるので、上司はゴーサインを出しやすい。

ただ、期待値はあくまでも平均であることを忘れてはいけません。平均は、デコボコを均ならすという意味。均したことでかえって実態が見えにくくなる場合もあります。先ほどの例で雨が降れば、集客100人で入場料収入は10万円、イベントは10万円の赤字です。もし「赤字は最大5万円まで」という社内ルールがあるなら、いくら期待値で黒字になっても、このイベントは開催不可です。期待値は平均値であり、ばらつきや偏りがどれだけあるかはわかりません。最大値と最小値の幅が広いとギャンブル性が高くなることも押さえておきましょう。

期待値の考え方は物事の判断に役立ちますが、取り扱い注意です。実際に期待値をどのように活用すればいいのか、日常生活の身近なシーンで解説していきましょう。

すべて買えば当たるが投資額には見合わない

宝くじの期待値は、全等の確率と賞金を足し合わせて求めます。日本の宝くじは法律で還元率(約50%)が決まっていて、期待値は最大で150円です。1枚300円なので、理論上は1枚買うごとにざっくり150円の損をする計算になります。その基本を押さえたうえで、こう考える人もいるでしょう。

「当たっても下の等ばかりで、買った額の半分も回収できていない。これまで平均以下だから、たくさん買えば逆に1等が当たって儲かるのでは」

(構成=村上 敬 イラストレーション=前田はんきち)