90%オフ」「満足度ナンバー1」「星5つ」――その数字、本当に信じていいのか。四則演算で人を欺く詐欺的表示の手口と、身を守る術を伝授しよう。

悪質業者は「四則演算」で消費者心理をくすぐる

SNSやネットを利用しない日はない、現代人の日常。そこには、数字を巧妙に使った悪質商法や詐欺的表示があふれています。読者の中にも、わかりにくい表現だな」「この表示って本当に合法?」などと疑問に思った経験がある人も多いのではないでしょうか。

最近では、FIFAワールドカップ2026の配信を巡るDAZN(スポーツ専門動画配信サービス)の料金表示が問題になりました。最初の3カ月限定である「月額980円」という安値が強調されていたことに対し、4カ月目から通常月額に切り替わり、途中解約できない年間契約で総額2万6340円になることが、読み落とされやすい位置に小さく表示されていたというものです。「好きなときに解約できる」と勘違いして契約に至ったユーザーを中心に、大きな批判を呼びました。

このように、サイトやアプリの画面設計(UIデザイン)によって売り手の利益となる方向へと消費者を誘導する手法は「ダークパターン」と呼ばれます。ダークパターンは直ちに違法とは言い切れないグレーゾーンですが、だからこそ厄介です。DAZNは騒動の後に謝罪を行い、即時解約や利用料金の返金対応を実施しました。しかし、明確な違法性がないのをいいことに、クレームを受けても何の対処も講じない企業が少なくないのです。

こうしたトラブルは、今に始まったことではありません。舞台がネットやアプリになっただけで、消費者心理をうまく利用した悪質商法は昔からある古典的な手口といえます。にもかかわらず、なぜ私たちは騙されてしまうのでしょうか。そこには、数字を使った巧妙なトリックが隠されています。

私はよく、「悪質業者は四則演算で騙す」という説明を用います。最もわかりやすいのが「引き算」です。あえて定価を提示したうえで、「今だけ90%オフ」などと大きく値引きした価格を打ち出すことで、お得感を演出するというものです。次に「割り算」。1年の総支払い額ではなく、月額として割った価格を見せ、「これなら払えそう」と、消費者心理をくすぐります。

さらに、はやりの時事ネタをプラスすることで、人々の関心を引くのが「足し算」。DAZNの件は、「割引料金」「月額表示」「ワールドカップ」と、「引き算」「割り算」「足し算」の考え方が活用されていたことがわかります。ちなみに「掛け算」は、「一度騙された人が繰り返しターゲットにされ、被害額を倍増させていく傾向」のことをいいます。多額を騙し取る詐欺のケースで見受けられる事例ですが、頭の片隅に置いておいて損はないでしょう。

「星5つ」「いいね」はいくらでもお金で買える

ほかにも、数字を使ったトリックは、様々な形で使われています。中でも象徴的なものが、自社と他社の商品を比べた比較広告。その中でも話題になりやすいのが「ナンバー1広告」です。「第1位」という表現は、合理的な根拠に基づいていなければ、優良誤認表示として景品表示法違反に該当します。しかし、ナンバー1広告においてはその根拠となる調査が実際に行われている場合がほとんどです。問題なのは、その調査のやり方。「ナンバー1」という数字を意図的に作りあげるために、多くのからくりが存在しているのです。

まず挙げられるのが、偏ったプロファイルの対象者にのみ調査を実施する手法。本来であれば平均的な国民の縮図となるよう多様な人々に向けてアンケートを実施するべきですが、その商品・サービスを好意的に受け取るであろう年齢、性別、属性の人々のみを対象者にするというものです。

次に、調査期間の調整。これは、好ましい結果が出たところで調査を打ち切ったり、都合のいい結果が出た短期間の回答のみを採用したりする手法です。また季節性の商品は、需要の高い時期・地域にのみアンケートを実施し、その結果があたかも通年の口コミのように発信されていることもあります。ほかにも「自社商品の写真を、比較対象となる他社商品よりも高画質にする」「『医師の90%が推奨』など、権威性のある言葉と数字をセットで打ち出す」などとすることで被験者からの支持を集め、多くの“人工的ナンバー1”が作りあげられているのです。

こうした現状を鑑み、2024年以降、消費者庁は悪質な「ナンバー1広告」の摘発に本腰を入れています。法のグレーゾーンを巧みに利用する業界に、メスが入り始めたのです。実際に「おすすめしたいダイエットサプリナンバー1」「施術満足度ナンバー1痩身エステ」などと謳っていた業者は、単に「サービスのイメージ」を尋ねた結果をもって「満足度ナンバー1」と表示しており、消費者庁長官も「客観的な調査に基づくとはいえない」と、公にコメントしています。

(構成=中村真紀)