シャープがこだわった「オンリーワン」
設計や製造、組み立てなど各工程を世界中で分業する“水平分業”の隆盛の波に乗った鴻海精密工業に比して、キーデバイスからそれを組み込んだ最終製品を一貫して作る“垂直統合”を掲げてきたシャープは次第に旗色が悪くなっていった。
次世代のキーデバイスとして期待されていたシステム液晶(CG液晶)は、技術力の高さをアピールするのには役立ったが、事業としては失敗に終わった。特許でガードして製法を秘密にし、他社が作れないようにしたシャープだけの“オンリーワン”のデバイスだっただけに、逆に作り手は広がらなかった。
シャープは次いで半導体エネルギー研究所と共同開発したIGZO(酸化物半導体)を使い、シャープしか作れない、低電力で高精細なスマホに適した液晶を実現したが、これも供給メーカーがシャープ1社しかないのが弱点になった。
シャープの広報担当者は「商品であればオンリーワンで良かったのでしょうが、デバイスではオンリーワンではダメだったんです。セカンドソースがないから結果的にロンリーワンになってしまいました」と説明した。
亀山テレビの大ヒットで売上は3兆円
大量に部品を購入するアップルのような取引先からすると、シャープ1社しか供給できない特殊な液晶に依存するのはリスクが大きかった。経産省の担当幹部も「イグゾーはいまから振り返ると有機ELに行く手前の中間的な技術にすぎなかったんです。シャープがそっちに向かっても他のテレビメーカーは追随せず、実用化に失敗しました」と言った。
かといってシャープはシステム液晶やイグゾーを組み込んだ自社のオリジナルな商品を開発することはできなかった。シャープは、独自のキーデバイスを開発して搭載する「スパイラル戦略」をとってきたものの、この方程式がついに限界に達したのだった。
スパイラル戦略が破綻しつつあるなか、亀山産の液晶テレビはまだ好調なセールスを記録していた。町田勝彦が社長を退き、片山幹雄が49歳で新社長に就任した2007年以降も快進撃は続き、2008年3月期決算の売上高は3兆円を超え、5期連続で過去最高を更新した。そのうち液晶パネルの売上高は1兆円を超え、汎用品の液晶パネルと液晶テレビの売上高はシャープ全体の6割を占め、液晶に依存した経営となっていた。
「目の付けどころが、シャープでしょ。」というスローガンは、シャープが他社とはひと味違う商品を世に出してきたことを自負したものだったが、亀山産テレビの大ヒットはそうしたDNAを忘れさせた。

