日本の防衛力強化に、中国は「軍国主義の復活」と猛反発している。だが本当にそうなのか。海外メディアは海上自衛隊の護衛艦に搭載された“新兵器”に注目。台湾やシンガポール、フィリピンなど近隣国の専門家や指導者はむしろ「遅すぎたほどだ」と歓迎していると、報じている――。
イージス護衛艦「ちょうかい」
出典=海上自衛隊ホームページ
イージス護衛艦「ちょうかい」

海上自衛隊が獲得した「新兵器」

3月最終週、日本は安全保障に関する3つの「初」を同時に達成した。

第1に、熊本の陸上自衛隊健軍駐屯地に、三菱重工業が開発した改良型12式地対艦誘導弾が初めて配備された。この動きは米全国紙のワシントン・ポストが報じるなど、海外でも取りあげられている。

同誘導弾の射程は約1000キロ。旧型の約200キロから一気に5倍へ伸び、中国本土を射程内に収める。敵の射程外から反撃する「スタンドオフ」能力の実戦配備は戦後初であり、平和憲法下で長年堅持してきた専守防衛からの転換となる、とワシントン・ポストは伝える。

第2に、同じ日、静岡にある在日米海兵隊のキャンプ富士に、島嶼防衛用の極超音速滑空体(HGV)が初めて配備された。音速の5倍を超え、迎撃がきわめて難しい新型兵器だ。

そして第3の「初」は、海上を舞台としている。米国防専門グローバル誌のディフェンス・ニュースによると、こんごう型イージス護衛艦「ちょうかい」がアメリカで改修を受け、トマホーク巡航ミサイルを発射できる日本初の艦艇となった。射程は1600キロ超。東京から沖縄本島までの直線距離に相当する。

トマホークは、艦船や潜水艦、地上の発射機から運用できる巡航ミサイルだ。複数の誘導方式を組み合わせることで高い命中精度を実現しており、低空を亜音速で飛翔して目標を精密に打撃できる点が大きな特徴だ。1980年代から配備が進み、1991年の湾岸戦争で初めて実戦で使用された。

防衛力の強化には国内でも賛否両論があるが、こうした動きをむしろ「遅すぎた」と見る専門家もいる。台湾の安全保障シンクタンクである国防安全研究院(INDSR)の研究員、ベンジャミン・ブランダン氏はディフェンス・ニュースに対し、日本は「長らく先送りにしてきた」反撃能力の運用化を進めているところだと語った。厳格に国土防衛に徹してきた日本が、最大1000キロ圏の地上・海上目標を打撃しうる「準地域的抑止」へ踏み出した格好だ、と同氏は捉える。

現状、日本国内の報道で目立つのは、もっぱら中国政府の反発と住民の不安を伝える内容だ。台湾やフィリピン、シンガポールなど近隣国の専門家や指導者がむしろ歓迎しているという事実には、ほとんど触れられていない。

米軍のミサイルは1週間で尽きる

台湾の研究者が「遅すぎた」と評した背景には、きちんとした裏づけがある。

安全保障シンクタンクの新アメリカ安全保障センター(CNAS)によると、2025年、中国人民解放軍は南シナ海で過去最多となる163件の作戦を展開し、うち55件が実弾演習だった。

フィリピン沖スカボロー礁周辺では活動件数が前年の2倍に膨らみ、日本周辺でも艦艇の航行は111回を数えた。馬毛島の航空自衛隊新基地にほど近い、鹿児島の大隅半島沖に位置する大隅海峡だけでも、通過回数は17回に上る。

中国軍の脅威が高まる一方で、米軍が撃てるミサイルには限りがある。米シンクタンクのランド研究所は、「日本は中国の侵攻艦隊の撃沈を支援すべきだ」(Japan Should Help Sink China's Invasion Fleet)と題した論考を発表。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が2023年に実施した台湾有事のウォーゲーム(机上演習)を取りあげ、24通りのシナリオが検証されたが、結論は一つだったと論じる。いずれのシナリオでも、アメリカは開戦から1週間以内に長距離対艦ミサイルを撃ち尽くすとの結果に落ち着いた。

この穴を埋めうるのが日本の打撃力だ。同論考は、日本はトマホーク400発を24億ドル(約3600億円)で調達し、約150機のF-35にノルウェー製統合打撃ミサイル(JSM)を搭載する計画であると指摘。独自開発の改良型12式地対艦誘導弾も、すでに射程1000キロ超の試験を終えており、中国本土にも侵攻艦隊にも届く。

仮に中国が台湾有事で侵攻のために艦隊を放てば、艦隊が最も脆弱になるのは、台湾海峡を渡る初期の局面だ。その隙を、日本はトマホーク・12式地対艦誘導弾・JSMで突くことができる。侵攻を阻止する手段を日本が握ることで、中国はその前提で軍事面での計算を組み直さねばならない。すなわち、強力な抑止力として機能する。