中国が日本に過剰な反応を見せるワケ

日本の反撃能力がどれほどの戦略的インパクトを持つかは、中国の反応を見れば明らかだ。

米保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)が詳しく紹介した米国家情報長官室(ODNI)の2026年版年次脅威評価によると、台湾防衛をめぐって日本の姿勢が変わりつつあることを、中国は「転換点」とみなしている可能性が高いという。

ODNIは、台湾有事に日本が関与しうると示唆した高市早苗首相の発言に、中国が危機感を強めていると指摘した。高市発言をきっかけに台湾独立の動きが勢いづくことを、「中国がおそらく懸念している」とも分析し、尖閣諸島周辺で中国の威圧がさらに強まる恐れがあると警告している。

もっとも、これに対し木原稔官房長官は3月19日、「重大な政策転換があったとの主張は不正確だ」と冷静に退け、台湾をめぐる日本の立場は、「常に一貫してきた」と強調した。

日本政府は高市発言後のフォローアップで抑制的な姿勢を示そうとしているが、それとは裏腹に、中国は苛烈な報復姿勢を前面に押し出している。

ランド研究所の分析によれば、中国の王毅おうき外相はこの発言を、「衝撃的だ」と非難し、中国の薛剣・在大阪総領事は高市氏を「斬首」すると公然と脅迫した。日本向け航空便の運休に加え、重要鉱物の禁輸も矢継ぎ早に打ち出された。

中国がこれほど大きく反応したのはなぜか。日本の防衛態勢が変わったことで、台湾有事をめぐる算段が根底から狂い始めたことへの焦りとも取れる。

シンガポール首相が示した「日本支持」

中国が「軍国主義の復活」と批判するなか、東南アジアからは日本の動向を歓迎する声が上がっている。

2025年、中国政府は日本の敗戦から80年の節目に合わせ、大がかりな反日キャンペーンを展開した。シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所の分析によれば、国内向けのプロパガンダとして始まったこのキャンペーンは、高市早苗首相が台湾有事について日本の「存立危機事態」になり得ると示唆したことを機に、諸外国へも働きかける展開へと転じた。各国に残る戦時の記憶をてこに、自国の立場への同調を迫ったのだ。

だが、この圧力をはねのけた指導者がいる。シンガポールのローレンス・ウォン首相だ。ウォン氏はシンガポールと東南アジアが歴史から「前進している」と述べたうえで、「安全保障の面も含め、日本がより大きな役割を果たすことを支持する」と明言した。

日新首脳会談
出典=首相官邸ホームページ
日新首脳会談

シンガポールと言えば、かつて日本軍に占領された国でもある。その首相が、反日キャンペーンのさなかにあえて言い切った形だ。中国が唱えてきた「アジアは日本の軍拡を恐れている」という主張に対する、大きな反証となった。

ウォン氏がこう言い切れるのは、東南アジア全域で日本に対する見方が変わりつつあるからだ。ISEASの調査によると、「日本の軍事力は世界の平和と安全保障にとって資産だ」と答えた東南アジアの回答者は、2020年にはわずか1.5%にすぎなかった。それが2025年には10.5%と、5年で7倍に増えている。依然少数派ではあるが、確かな変化だ。

2023年の日本外務省調査でも、東南アジアでは回答者の88%が、地域の平和・安定・災害対応において、自衛隊がより積極的な役割を果たすことを支持した。