フィリピンが日本に期待を寄せるワケ

フィリピンからも、日本が安全保障上の役割を行動で示すよう期待されている。

今年1月、日本とフィリピンの両国は、弾薬・燃料・食料といった軍事物資を相互に移転する防衛協定に署名した。米国際政治誌のフォーリン・ポリシーによれば、この協定は昨年発効した部隊間協力円滑化協定(RAA)を補完し、部隊が相手国で活動する際に兵站の基盤を整えやすくする。

日本はすでにフィリピン沿岸警備隊や海軍に艦艇を供与しており、防空ミサイルの売却協議も並行して進めている。署名式でフィリピンのテレサ・ラザロ外相は、南シナ海における航行の自由を含む「法の支配の推進」を両国が重視していると述べた。協定には台湾有事を見据え、自国民を安全に退避させるための相互協力条項まで盛り込まれた。

日比が協力を急ぐのは、南シナ海の現場が急速に緊迫しているからだ。AEIによれば、3月、フィリピンの排他的経済水域にあるサビナ礁付近で、中国海軍のコルベット(小型戦闘艦)がフィリピンのミサイルフリゲート艦「ミゲル・マルバル」に火器管制レーダーを照射した。兵器の照準に用いるレーダーであり、砲口を向けるにも近しい威嚇行為だ。

協定に加え、訓練の現場でも日比は歩調を合わせ始めている。新アメリカ安全保障センターによれば、昨年4月にフィリピンで実施された米比共同の大規模軍事演習「バリカタン」に、日本が初めて加わった。

三菱重工が受注した「1兆円プロジェクト」

こうした動きは、アジア太平洋全域、さらに欧州にまで広がっている。

ISEASはオーストラリアのローウィー研究所の「東南アジア影響力指数」を引用し、東南アジアの国々にとっての日本の防衛パートナーとしての順位は、2017年の15位から2025年には4位へ跳ね上がったと指摘する。

同じくローウィー研究所の「アジア・パワー・インデックス2024」でも、日本のスコアが最も伸びたのは防衛ネットワークの分野で、上昇幅は13.1ポイントに達した。実際、日本と東南アジア諸国との共同演習は2014年以降着実に回を重ねており、海上自衛隊が各国に寄港する光景もいまでは珍しくない。

同研究所は「日本は憲法上の制約と第二次世界大戦の歴史に関する慎重さを認識しながら、米国および他の同志的パートナーとの緊密な連携の下で、より直接的な安全保障姿勢を追求してきた」と評価する。

共同演習と並行して、防衛装備の輸出や多国間の枠組みへの参画も相次ぐ。

象徴的なのがオーストラリアの決断だ。同国は2025年、三菱重工業に海上自衛隊が運用する「もがみ」型護衛艦の能力向上型11隻の建造を発注した。契約総額65億ドル(約9750億円)。日本の防衛産業にとって史上最大の輸出案件だ。

護衛艦「もがみ」
出典=海上自衛隊ホームページ
護衛艦「もがみ」

イギリス及びイタリアとは、第6世代戦闘機を共同開発し2035年の配備開始を目指す「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」に加わり、NATO(北大西洋条約機構)には専任代表部を新設して防衛産業協力面での対話も始めた。さらに、日米豪3カ国は同年、給油やミサイル再搭載を含む三者間の兵站協定にも署名している。

日本は途上国への安全保障支援にも独自に乗り出している。その柱となるのが、2023年に発足した「政府安全保障能力強化支援(OSA)」だ。フォーリン・ポリシーが今年1月に報じたところでは、2026年度予算は約1億1600万ドル(約174億円)で、前年比125%増となった。フィリピンやインドネシアなど東南アジア5カ国を含む計8カ国を対象とする。