中国人民解放軍の上層部で粛清が相次いでいる。米戦略国際問題研究所によれば、最高階級に位置する上将の約9割が消えたという。中国で何が起きているのか、そして習近平へのクーデターの可能性はあるのか。神戸大学で中国共産党を研究する周俊講師に、ジャーナリストの高口康太さんが聞いた――。
2026年3月9日、中国・北京で開催された第14期全国人民代表大会(全人代)第4期会議の第2回全体会議終了後、会場を後にする習近平国家主席(中央)
写真=EPA/時事通信フォト
2026年3月9日、中国・北京で開催された第14期全国人民代表大会(全人代)第4期会議の第2回全体会議終了後、会場を後にする習近平国家主席(中央)

中国の将軍が次々と「粛清」されている

中国人民解放軍が潰滅的な打撃を受けている。2022年以後に失脚したとみられる上将、中将の数はなんと101人、3桁に達してしまった。ロシア軍はウクライナ戦争で20人の将官を失ったとされるが、平和なはずの中国でその5倍もの将官が“消失”している。

人民解放軍の将官消失、その要因は粛清だ。事由が公開されたケースではほとんどが汚職容疑となっているのだが、真相は定かではない。明らかなことはただ一つ、大粛清が行われ、人民解放軍の将軍たちが次々といなくなっているということだけだ。

人民解放軍でいったい何が起きているのか。そして、これほど過酷な粛清にさらされている軍からは反発の声は上がっていないのか。あるいは、クーデターは起きないのだろうか。

人民解放軍への粛清はどれほど過酷なのか。米戦略国際問題研究所(CSIS)が今年2月に発表した「中国軍粛清データベース」を見るとよくわかる。2022年以後に粛清された疑いのある上将、中将のリストを作っているのだが、その数はなんと101人に達している。

【図表1】2022年以降に粛清された中国人民解放軍高官の人数
出所=CSIS「中国軍粛清データベース」をもとに高口氏が作成

正式に処分が発表されたのが36人、残る65人は処分こそ発表されていないものの、公の場から姿を消している将官だ。「粛清発表待ち」の状態である。

習近平へのクーデターは起こるのか

中国人民解放軍の上将、中将の総数は機密のため公開されていないが、軍上層部の相当数が消えたことは間違いない。CSISによると、2022年時点で上将、または2022年以後に上将に昇進した47人のうち、41人が粛清されたと推計している。粛清の確率は47分の41、上将になると約9割が粛清されてしまう計算だ。

いったい、何が起きているのか。さまざまな憶測が飛び交っているが、究極的には確かめようがない。だからこそ、誰でも無責任な評論家として無限に議論できるテーマとして楽しまれているわけだが、本稿ではちょっと視点を変えてみたい。

上将まで出世すると、9割の確率で粛清されてしまう中国人民解放軍。もちろん、仕事しないで、のほほんと生きているとそれはそれで怒られてしまう。やる気を見せずにだらだらと仕事をして目立たないように生きることを、中国語で「為官不為」と言うが、こちらも汚職と同じく罪である。つまり、出世したら粛清され、出世しないようだらだらしても処分されてしまう。

八方ふさがりの状況で、私のような小心者は脱走してしまいそうだ。追い詰められた人民解放軍の将校たちはどうするのか。クーデターのような反抗以外、もう道はないのではないか。

この疑問について、中国現代政治史を専攻する、神戸大学の周俊しゅうしゅん講師に聞いてみた。