ハメネイ師をはじめ指導者層の多くを殺害されたにもかかわらず、イランは変わらず強硬姿勢をつらぬいている。なぜイランは強気でいられるのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんは「イランのリーダーはモジタバ師だが、その裏で対米強硬論を主張する“黒幕”がいる」という――。
なぜイランはいまだ降伏しないのか(イランの新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の肖像、2026年4月2日)
写真提供=共同通信社
なぜイランはいまだ降伏しないのか(イランの新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の肖像、2026年4月2日)

イランの指導体制はどうなっているのか

イランと米国の駆け引きが続いているが、イランは強気な姿勢を崩していない。

その背景に「イラン政権内で強硬派が台頭している」という見方がある。

とくに最高指導者のモジタバ・ハメネイの画像や肉声が一切出てきていないことから、彼が健康面できわめて重篤な状態にあり、実際は革命防衛隊(IRGC)が政権を仕切っているのではないかと、海外のメディアやシンクタンクでも指摘されてきた。

しかし、イラン政権内の情報は極端に秘匿されており、実際のところは不明だった。

ただ、最近になって「イラン政権内では現在もモジタバ師が指導的役割を果たしている、と米情報機関は分析している」(5月9日:CNN)といった見方が主流になってきている。

対米交渉をはじめ重要な政策決定ではモジタバ師に絶対的な権限はあるが、体調が万全でないことに加え、所在秘匿のために政権幹部との連絡が密でないので、日々の政治の実務はIRGC上層部などが主導しているとの見方である。

実際、5月7日には、ペゼシュキアン大統領がモジタバ師と2時間半の会談を行なったと公式に発表された。

同10日にも、イラン軍(IRGCと国軍)の作戦を統合的に指揮統制する実質的な“大本営”である「ハタム・アル・アンビヤ中央本部」のアリ・アブドラヒ司令官がモジタバ師と会談したとも発表された。

モジタバ師が意識不明に近い重篤な症状であれば、そうした公式発表が出ることはまず考えられない。モジタバ師が指導的役割を果たしているのは間違いないだろう。謎に包まれていたモジタバ新体制の陣容も、徐々に明らかになってきている。