粛清は中国共産党にとって平常運転
――中国軍の粛清は異常レベルに達しています。ここまで来ると、軍がクーデターを起こさないのが不思議なぐらいです。
【周】クーデターが起きる条件は整っている。大きな政治的変動が近いのではないか。そうした見立ては政治体制が変わってほしいという期待を投影したものであって、現実とはかけ離れたものでしょう。
そもそも、1921年の中国共産党建党以来100年、軍に対する粛清は何度もありました。驚くような事態であることは事実ですが、未曾有の事態とまでは見えません。むしろ、中国共産党の権力システムにおいて、軍に対する粛清は異常事態というよりも、必然的に発生することだと捉えるほうが適切かもしれません。
今回の粛清のきっかけが台湾有事の反対派をパージするためなのか、それとも権力闘争なのか、はっきりとした答えを導き出すことは困難です。ですが、根底にあるのは習近平総書記の猜疑心であると言えるのではないでしょうか。自分に完全に従わないものを粛清したということです。
――ですが、粛清されたのは習近平総書記の腹心や子飼いの部下です。
【周】そのとおり。ただ、元々は自分と関係が深かったり、部下だったりした人物であっても、ある時から自分に依存していないのではないか、他の人間と結託しようとしているのではないかと疑いの目をかけられるという変化はありえます。
反乱を起こしたくても起こせないワケ
――実際に反対勢力を築こうという動きがあった可能性も?
【周】その可能性は小さいでしょう。中華人民共和国の体制ができあがった後、クーデターが起きたことは一度もありません。近いものとしては林彪事件(1971年、軍トップの林彪が毛沢東暗殺を企てたとされる事件)がありますが、近年の研究成果では林彪本人は暗殺計画に関与していなかったとの学説が有力です。
なぜ、中国でクーデターが起きないのか。よく言われるのは組織的なメカニズムです。人民解放軍には作戦指揮系統のほかに、政治委員と呼ばれる政治系統のポストがあります。政治系統のほうが上のポジションで、軍人は常に監視の目にさらされています。
近年では監視カメラや検閲、盗聴など、中国のデジタル監視システムは飛躍的な発展を遂げています。

