習近平の自滅で台湾侵攻は困難に

――CSISの粛清データベースを見ると、台湾有事の最前線にあたる東部戦区は林向陽(リィン・シャンヤン)司令官、劉青松(リウ・チンソン)政治委員、王仲才(ワン・ジョンツァイ)副司令・海軍司令官、孔軍(コン・ジュン)陸軍司令官がリスト入りしています。

【周】それでも東部戦区はまだましなほうで、もっとひどい戦区もあります。全体の作戦計画を担当する参謀部もボロボロです。もし、習近平総書記が台湾侵攻に反対する者を粛清したのだとしても、実際にそれを実行することは困難になっていると見ていいのではないでしょうか。

軍の粛清は必然的なメカニズムなので、今後も続くでしょう。今回クビを切られた人々の代わりに昇進した軍人たちも、数年後には再び粛清される。その繰り返しとなると、台湾侵攻はもはや未来永劫、実行不可能になった可能性すらあります。

――軍の粛清などについて、日本メディアが報じる際の決まり文句として「習近平総書記の支配が盤石になった」があります。ですが、むしろ粛清によって統治が揺らいでいるとも言える、と。

【周】そうした見方は中国社会を深く理解していない、外からの見方です。絶大な権力を持つ習近平総書記には逆らえないし、反抗する勢力も出てこない。それが多くの中国人の実感ではないでしょうか。目に見える反抗ではなく、だんだんと社会全体の活気が失われていく。そうした局面が続くのではないでしょうか。

毛沢東の死が文化大革命を終わらせる転換点になったように、習近平総書記が健在なかぎりは中国の大きな転換は起きない。その代わりに緩やかに社会の活力が失われていく。こうした未来像がもっとも蓋然性が高いシナリオでしょう。

定年後も監視される中国高官の悲哀

日本旅行にやってきた、中国の元官僚の話を聞いたことがある。奥さんの爆買いショッピングにつきあってへとへとだったが、「日本は監視カメラが少ない。民度が高いからだろう。中国ではこうはいかん」などと、旅行の発見を楽しげに話していた。

上機嫌になるのもそのはず、一定以上のポジションの官僚は定年しても数年間は海外旅行が禁止されている。ようやく解禁されて初の海外旅行に大興奮していたのだった。

中国の官僚、そして軍人は絶大な権力を持つが、その一方で厳しい監視下に置かれている。中国共産党の「派閥を作らせない、反乱を起こさせない」ための仕組み作りは一流のようだ。

中国の監視カメラ
写真=iStock.com/NGCHIYUI
※写真はイメージです

しかし、その仕組みは反乱を起こさせないことには長けていても、人々の活力を引き出す意識には欠けている。あまりにも過酷な粛清が吹き荒れる中、人民解放軍がその意欲と戦闘力を維持することは難しそうだ。粛清は中国軍高官にとっては苦しい日々だが、隣国に住む我々にとっては歓迎すべき話なのだろう。

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