※本稿は、河村泰貴『どうしたらバイトから社長になれたんですか?』(プレジデント社)の一部を再編集したものです
自分が煮込んだ牛丼が一番うまい! という誇り
今も昔も、吉野家の牛丼は牛肉から店内調理をしてお客様にご提供している。工場で加工調理されたものを温めて出しているわけではない。だからこそ、ある一定の基準を守りながらも、調理者の技量や気配りが味のニュアンスを生み出している。
つまり、技術介入の余地が現場に残されている、店舗によって美味しさが違うということだ。
それがあるから、吉野家の牛丼の価値は守られてきたのだと、僕は考えている。「うまいものを作りたい」、そのために技術を磨くというモチベーションにつながっている。それがお客様にも伝わっているんだと僕は信じている。
だから、吉野家の社員たちは、皆、口を揃えていう。「自分が煮込んだ牛丼が一番うまい」と。
かくいう僕も同じ思いだ。現場のアルバイト時代も、今も。「僕が煮込んだ牛丼が一番うまい」と思っている。
現場からトップまでが、「自分の牛丼が一番」と思っているチェーンなんて、世界中どこを探しても類を見ないのではないだろうか。
これが、もし、ただ工場で加工調理された商品を加熱してご提供するだけだったら、誰もそんな誇りを持てなかったはずだ。
とんかつ? ステーキ? そして
吉野家の歴史は、牛肉に左右され続けた歴史といっても過言ではない。1980年の会社更生法、そこから奇跡の復活、1990年代の急成長、そしてBSE……。
牛丼専門店の吉野家は、いい時も、悪い時も、牛肉相場に左右され続けてきた。
だから、「第2の柱」を創ることは、リスクマネジメントの観点からも必要なことだった。
そして、この「第2の柱」も、自分たちが誇りに思えるモノづくりでなければならない。
そこで、店内調理でこそ価値が高まる商品設計、「自分が作った○○が一番」と思えるような商品の開発を目指した。加えて、テイクアウト適性があるかどうかも重要だ。
「とんかつ」や「ステーキ」も試したが、専門店に勝てるバリューを創り上げることができなかったり、テイクアウトが低調だったりして、販売数も顧客評価も期待した水準には届かなかった。
最後に残った有力候補が「から揚げ」だ。


