「自分のから揚げが一番」とするための研究
から揚げは、食事にもおやつにも、晩酌のおともにもなる。テイクアウトとの相性もいい。中食でも人気のお惣菜だ。
しかも、コンビニやスーパーで揚げたてを提供することはできない。居酒屋や定食チェーンなどでも必ずから揚げはメニューはあるが、その多くは冷凍のから揚げを揚げているだけで、お店で生肉から粉打ちをしてあげているチェーン店は、専門店を除いてほぼないだろう。だから、店内調理をすることで、明確に品質の差別化ができる。
僕たちは徹底的にから揚げを研究した。
鶏肉の品種、調味液、粉の吸湿性、フライヤーの温度や揚げ時間などのオペレーション。どこまでをセントラルキッチン化して、どこを店舗作業として残すのか。その結果、から揚げの調理工程の中で、最終品質を大きく左右する要素は調味液を漬け込んだ鶏肉に「粉打ち」する工程だとわかった。
この作業を店舗ですることで、従業員の技術介入の余地が残る。つまり「自分のから揚げが一番」と思える要素が残るのだ。漬け込んだ鶏肉を、丁寧に形を整え、手で粉をまぶす。実際、粉打ちの上手な従業員が仕込んだ、あげる前のから揚げは、まるでデパ地下に並ぶスイーツのように美しい。揚げ上りもムラがなく、鶏肉のうま味は逃がさず、外はカリっと、中はジューシーな肉汁が噛むとほとばしる。
この手仕事が、吉野家にしかない「現場」の味を生み出す。
牛丼の魂を受け継ぐ、から揚げが誕生した。
オーダーから4分以内に提供せよ
しかし、発売当初のから揚げには大きな問題があった。
ご注文いただいてから揚げるという店内調理にこだわったため、提供時間が10分近くかかってしまっていたのだ。商品のクオリティには自信があったり、召し上がっていただいたお客様の評価も高かったのだが、それだけ提供時間がかかる商品を持ってしまうと、他の商品の提供時間にも影響を与えてしまう。
現場にとっては、お客様にお勧めしづらい、どうにも扱いづらいアイテムとなってしまっていた。特にランチタイムでは、僕自身も一度も店舗でお勧めされた記憶がないのだ。
訴求しなければ、どんなにクオリティに自信があっても、「吉野家にから揚げがある」ということを知っていただけない。時間を「満足」水準である4分以内にするよう、調味液、打ち粉、調理機器……すべてを一から見直した。当然、商品クオリティは絶対に墜とさずに、だ。
こういうときの吉野家は強い。
「4分以内に提供する」という明確な目標に、全員が一点集中した。
とても高いハードルだったと思うが、ランチタイムにから揚げを4分以内に提供できる体制を整えることができた。


