日産自動車が経営再建に追われる一方、トヨタ自動車は日本企業で初めて売上50兆円を突破した。何が2社の明暗を分けたのか。日経クロステック編集委員の近岡裕さんの著書『日産 最後のサバイバルプラン』(日経BP)より一部を紹介する――。(第2回)

約500社の部品メーカーが切り捨てられる

カルロス・ゴーン氏による経営再建計画「日産リバイバル・プラン」により、日産自動車は取引する部品メーカーを1145社から600社に絞り込んだ。これは部品メーカーから見れば、半分が切り捨てられたことを意味する。

だがその一方で、残った半数の部品メーカーは、受注量が増えて売り上げが増加すると期待した。ところが、それは皮算用に過ぎなかった。リバイバル・プランで示された3年間で20%のコスト削減については、日産自動車を救うために部品メーカーは受け入れた。

だが、日産自動車が業績を回復させた後に、多くの部品メーカーは期待したほどの業績を上げられなかった。むしろ、部品メーカーにはリバイバル・プラン以前よりも厳しい条件が課されるようになった。

ゴーン氏の下で日産自動車はいわゆる「系列解体」に踏み切った。株式を売却して系列部品メーカーとの資本関係を解消したり弱めたりした上で、部品調達に競争原理を働かせるための施策だ。それ以前の日産自動車は、系列部品メーカーから部品を購入するのが当たり前だった。

癒着から生まれた部品コストの上昇

「ケーレツ」という言葉で知られる系列内取引には、部品を安定的に調達できるという利点がある。その一方で、甘えも生んだ。日産自動車は幹部を系列部品メーカーの重要ポストに「天下り」させてもらう一方で、系列部品メーカーは日産自動車に部品調達を確約してもらうという癒着関係が生まれたのである。

これが行き過ぎた結果、日産自動車の部品の購買コストは跳ね上がり、経営危機に陥る大きな要因となった。日本ではよく見られるこうした「しがらみ」をゴーン氏は断ち切り、部品の調達改革を進めたのである。

こうして系列解体を進めた日産自動車は、契約に基づく欧米型の取引に移行。「世界最適調達」を合言葉に、新型車の開発のたびに最も低コストな部品を提供できるメーカーを調達先に選ぶようになった。その一方で、割を食ったのが部品メーカーだ。

安定的な取引という利点を失った上に、厳しい低コスト競争まで強いられることになったからである。おまけに、日産車の付加価値の向上を支える新技術の開発については、従来通り継続することを求められた。