習近平の長期政権を脅かすものは何か。新刊『習近平は何を恐れているのか?』(ビジネス社)を上梓した評論家の白川司さんは「首都北京、中国共産党の中枢、人民解放軍の総司令部、そして最大の産業集積地が、水リスクを抱えている中国北部に集中していることだ」という――。
AIより水インフラの整備が急務
2026年4月28日、中国共産党中央政治局会議は、「六つのネットワーク」の整備を打ち出した。水網、新型電力網、算力網、次世代通信網、都市地下管網、物流網である。
7月に新華社が配信した解説記事では、これを「治水の偉業」として誇ったが、この実質的な宣伝記事は、実は意図せずして中国の最大の弱点を晒したものになっている。
中国北部は慢性的な水不足に悩まされており、南部の長江の水を北部へ送り込む巨大プロジェクト「南水北調」が進められてきた。長江の上・中・下流から取水する「西線」「中線」「東線」の3ルートで構成され、このうち東線は2013年、中線は2014年に通水している。一方、青蔵高原東部を通る最難関の西線は、技術的・環境的な困難からいまだ着工に至っていない。
新華社は、この南水北調の東線・中線一期による累計送水量が892億立方メートルを超え、沿線48の大中都市・約1億9500万人が恩恵を受けたと伝える。華北の治理区では、2025年末時点で、2020年比で浅層地下水位が3.76メートル、深層が7.65メートル回復したとしている。
これらの数字を信じれば、北京の水道水の7割以上が南水北調のルートから来ており、天津中心部はほぼ全量を南方の水に依存している。
重要なことは、基幹インフラ計画で水がAIや通信より上位に置かれた点だ。これは水問題が今後の国家運営にとって大きな制約になることを、中国政府が自ら暴露したようなものである。

