水力発電に依存する四川省の惨状
この干ばつで四川省政府は8月15日から、省内のほぼ全域の工場に操業停止を要請した。当初は20日までの予定が25日まで延長され、フォルクスワーゲンやBOE(京東方科技集団)を含む省内ほぼ全ての工場が約2週間止まった。
トヨタは成都工場の完成車生産を停止し、EV電池世界最大手のCATL(寧徳時代)も宜賓市の主要リチウム電池工場を止めた。隣接する重慶市ではパナソニックやデンソーが操業を休止し、テスラの部品調達にも支障が出た。
※JETRO「四川省、電力制限を緩和、工場などが順次再開」(2022年9月1日)
習近平指導部はこの反省から再エネ拡大と原子力増設に舵を切ったが、原子力は冷却水を大量に必要とする。沿岸部は海水を使えるが、内陸部の原発は河川水に依存する。渇水が深刻化すれば、原子炉もまた稼働制限を迫られうる。水危機から逃れるための電源が、水危機に人質を取られているのである。
氷河が消え、水源が喪失している
チベット高原は「アジアの水の塔」と呼ばれ、長江・黄河・メコン川など主要10河川の水源である。その氷河が急速に失われつつある。ヒマラヤの氷河は今世紀に入ってから、それ以前の25年間に比べ2倍の速さで融解している。
※ダイヤモンドオンライン「『水爆弾だ…』中国が進める“世界最大級ダム”建設で、日本が直面する3つの深刻リスクとは?」(2025年8月22日)
中国が2025年に公表した「第三次氷河編目」によれば、1960年代から2020年にかけて国内の氷河面積は約26%縮小し、約7000本の小氷河が完全に消滅している。さらに、「第二次編目」(2008年前後)と比較すると、2008年から2020年の12年間だけで約6%が失われている。中国側も認めているとおり急速な後退期に入っている。
つまり、南水北調という「自転車操業」の補給源そのものが細りつつある。北部の地下水は枯れ、南部からの補給も細る。取水元の漢江の水量も近年は減少傾向にあり、2025年春には水が豊かとされる長江中下流域でも異例の水位低下が観測された。南部に負担を押しつけて北部を維持する構図は、南部の余裕が消えた瞬間に成立しなくなる。
しかも今年、その振れ幅はさらに大きくなりうる。香港天文台は2026年6月末、現在のエルニーニョ現象が「超強」レベルへ発達し、観測史上最強となる可能性があると発表した。洪水と渇水が交互に襲えば、既存の水利インフラの設計思想そのものが前提を失う。

