「自給率98%」という数字のトリック
習近平は「中国人の飯碗は中国人自身の手でしっかり握らなければならない」と繰り返しており、実際、公式統計では2024年の食料生産量は過去最高の7億トンを突破し、三大主食穀物の自給率は98%台を維持しているという。
この数字にはカラクリがある。
中国語の「食糧安全」は文字どおり「穀物の安全」で、米・小麦・トウモロコシだけを指す。つまり、飼料用穀物や食用植物油、畜産品は計算に含まれないのである。
では、実態はどうか。大豆の自給率は2000年の62.4%から2020年に16.6%へ激落した。大麦は17.6%、ソルガムは18.8%。食用植物油の輸入依存率は約70%で、原油の輸入依存度に匹敵する。
米外交問題評議会(CFR)の報告によれば、食料自給率は全体として2000年の93.6%から2020年に65.8%へ低下した。中国は2004年に食料の純輸入国に転じ、2021年には世界最大の食料輸入国となっている。しかも、うわべの数字を維持するために、農業生産の拠点を水が足りない北部へシフトさせているのである。
※COUNCIL on FOREIGN RELATIONS「China Increasingly Relies on Imported Food. That’s a Problem.」(2023年1月25日)
※ChinaPower「China’s Food Trade with the World」
水の足りない北部を耕し続けている
衛星データの分析によれば、華北平原では2001年から2013年までに都市が1万4000平方キロ拡大し、農地は2万1000平方キロが失われた。その穴を埋めたのが、東北平原と新疆の開墾である。水の足りない場所で都市が農地を食い、さらに水の乏しい場所を新たに耕している。
※Chao Wangほか「Spatially differentiated trends in urbanization, agricultural land abandonment and reclamation, and woodland recovery in Northern China」(『Scientific Reports』2016年)
水の豊かな南部の農地を減らして、水の足りない北部の農地を増やすというのが、中国の農業政策の実態である。
水のない場所で農産品を増産すれば、いつか地下水は枯れることになる。それでも止められないのが、中国の問題先送り体質の厄介さである。
2022年夏、長江流域は1961年の統計開始以来、最も長く高温が続いた。降水量は例年より4割減り、長江の水位も1961年以来の低さとなった。直撃を受けたのが四川省である。同省は電力供給の8割以上を水力に依存しており、猛暑で電力需要が25%増加する最中に、水力発電能力は半分以下に落ち込んだ。
※AFP「中国四川省、60年ぶりの高温と干ばつで深刻な電力不足に」(2022年8月20日)
