がんのステージや腫瘍マーカー値だけで寿命は決まらない。群馬大学第一外科の医師を経て緩和ケア医となり、『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)がベストセラーになっている萬田緑平さんは「私は病状より、その人が歩けるか、日常的な動作ができるかで余命がわかる」という――。
医師の萬田緑平さん、群馬県前橋市の萬田診療所にて
撮影=プレジデントオンライン編集部
医師の萬田緑平さん、群馬県前橋市の萬田診療所にて、2026年2月

「棺桶まで歩こう」に込めた意味

棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)では、「棺桶なんかに入りたくなかったら歩こう。生きてる間は歩こうよ」という提案をしました。人は歩けるうちは、死なない。在宅のがん患者を2000人以上の看取ってきた中で、人は病気になったり、がんが大きくなったりして死ぬのではなく「老いて、弱って死ぬ」と考えるようになりました。

どんなに体にいいとされるものを食べても、いくら健康にいいことをしても、人は必ず老化していきます。人は病気で死ぬのではなく、弱って死にます。病気が進んでも、弱らなければ、なかなか死なないのです。

僕の患者さんにも、がんが大きくなっても生きていられる人がたくさんいます。外からわかるくらいがんが大きくなり、体重が落ちて25キロになっても歩いている方がいます。

人は歩けているうちは、死にません。歩けるというのはがんばれるということで、がんばれるうちは死にません。「がんばれる」というのは気力がある、つまり脳の若さの表れなので、人は気力によって、弱っていくのを遅らせ、余命をのばすことができるのです。

余命は腫瘍マーカーでは決まらない

歩く速度や歩幅を見れば、その人の寿命がほぼわかります。例えば、がん患者に対して病院の医者が「余命何日」と告げる時は、腫瘍マーカーの数値で見ているわけですが、僕は「歩けるかどうか」で見る。スタスタと歩ける方は、おおむね10年以上生きられるでしょう。ちょこちょことしか歩けない方は余命数カ月、歩けない方は余命1カ月以内、というところです。では、歩けるためには何が大事なのかというと、「気力」と「根性」、そして「体幹の持久力」だと僕は考えています。

背筋を伸ばして、背もたれに寄りかからず座ってみてください。これは体幹の持久力があるからできる姿勢です。30分間、背筋を伸ばして座っていられる方は、30分歩けます。3分しか背筋を伸ばして座っていられない方は、3分しか歩けません。持久力ですから、マラソンの選手と一緒で細い筋肉があればよく、体幹の持久力があれば、どんなに痩せていても歩くことができます。