介護保険事業状況報告(厚生労働省、2020年)によると、寝たきりの高齢者は300万人を超える。緩和ケア医である萬田緑平さんは「逆に、自力で歩けるならまだまだ頑張れるということだが、介護する人が要介護者を『歩かせないほうが安全』と判断してしまうことが多い」という――。

※本稿は、萬田緑平『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

杖を使った屋内リハビリ
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人の寿命は歩幅と背筋でわかる

人は歩けているうちは、死にません。歩けるというのは、がんばれるということ。がんばれるうちは人は死にません。なぜなら、がんばれるというのは脳の若さだからです。ですから歩く速さや歩幅を見れば、ほぼその人の寿命がわかります。

スタスタと歩ける方は、おおむね10年以上生きられるでしょう。イスから腕の力を使わずに立ち上がれる人なら、余命1年以上。立ち上がれない人は余命半年以内。ちょこちょことしか歩けない方は余命数カ月、歩けない人は余命1カ月以内。

では、歩けるためには何が大事なのか。一言で言えば、「体幹の持久力」だと僕は考えています。

僕はよく、「心がではなく、医学的に、科学的に『疲れた』ってどういうことでしょう?」と問いかけます。

髪の毛が抜けた、口が乾く、指がしびれた……、それはいわゆる「疲れた」とは違います。

疲れると、体幹をキープできない

人間は「ああ疲れた」となると、バッタンキュー。そう、寝転びたい。立っていられないはずなのです。

「疲れた」とは自分の体をささえていられない状況。すなわち体幹の持久力が限界にきた状態です。

背筋を伸ばして、背もたれに寄りかからず座ってみてください。これは、体幹の持久力があるからできる姿勢です。持久力ですから、マラソンの選手と一緒で細い筋肉があればいいのです。太いむきむきの筋肉は要りません。

体幹の持久力があれば、どんなに痩せても歩くことができます。僕たちは、ふだん何かに寄りかかりながら歩く、ということはありえません。体重25キロでも歩ける人も、背筋はピシッとしているのです。

茶道、華道、書道など、さまざまな「道」の先生は背筋を伸ばして長時間座っている姿勢があたりまえになっています。体幹の持久力がある人はなかなか疲れませんから、「道」の先生たちはよほどでないと疲れたとは言いません。

30分間、背筋を伸ばして座っていられる人は、30分歩けます。3分しか背筋を伸ばして座っていられない人は、3分しか歩けません。

「食べられないから歩けない」と嘆く人が多いけれど、点滴で栄養を入れているから永久に歩けるわけではない。筋肉だけで歩いているわけでもない。