有名人の死因として報じられることも多い「誤嚥性肺炎」。2000人以上を看取ってきた緩和ケア医の萬田緑平さんは「私は誤嚥性肺炎を病気ではなく、死の一歩手前の状態だと考える。しかし、痰も出せない状態から2年以上生き、歩けるようになった人もいる」という――。

※本稿は、萬田緑平『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

咳をする高齢男性
写真=iStock.com/RyanKing999
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足だけでなく喉の筋肉も大事

患者本人が希望を持って「がんばろう」と思えれば、リハビリで筋力をアップさせることができます。リハビリの良さは、老化によってさまざまな機能が落ちていく中で、「上がっていく」ことを実感できることです。がんばってリハビリがうまくいくと「できることが増える」のでうれしくなり、気分も上がります。

リハビリで鍛えるのは、歩く筋肉だけではありません。人間は、足や体幹の筋肉が衰えていくのと同じように、呼吸するための筋肉「呼吸筋」も衰えていきます。

どうして人は息を吸って、吐けるのでしょうか。ちょっと長くなりますが説明しましょう。

実は、肺そのものは膨らんだり縮んだりできません。肺は「胸郭きょうかく」と呼ばれる箱のようなものに入っており、胸郭が広がると肺に空気が入り、縮むと空気が出ていくという仕組みです。

「呼吸筋」で息を吐き出している

「胸郭」とは、肋骨ろっこつ肋間筋ろっかんきんで作られた箱で、箱の底に「横隔膜」があります。

肋間筋の力で、肋骨と肋骨の間の距離を広げ、横隔膜が下がると胸郭の箱は大きくなり、連動して肺が大きくなる。これが「息を吸う(吸気)」です。

逆に、肋間筋の力で肋骨と肋骨の間の距離を縮め、横隔膜が上がると胸郭の箱は小さくなり、肺は押しつぶされて小さくなる。これが「息を吐く(呼気)」ということです。

肋間筋以外にも、呼吸に関係する筋肉はいくつかあり、総称して「呼吸筋」と呼びます。「肺活量」というと肺の大きさ、容量のように思えますが、実は肺の大きさではなく、呼吸筋のパワーを測っているのです。胸郭を呼吸筋で最大に広げた時と、縮めた時の差が肺活量です。

呼吸筋が弱ると、胸郭が大きくも小さくもなりにくい、つまり肺活量が下がるため、呼吸が浅くなり、息を吐き出す力が衰えてしまいます。大きく吸って、大きく吐く、それを短時間で一気にするのがせきです。呼吸筋が弱ると、弱い咳しかできなくなり、たんを吐き出すことができません。