レアアースの中国依存が問題視される中、影響は他の資源にも広がりつつある。中国は世界の銅の製錬量の約6割を握り、採掘でも市場支配力を強めている。海外メディアは、一部の精錬所が操業停止に追い込まれていると報じている――。
習近平国家主席は2026年2月25日、中国・北京の釣魚台国賓館でドイツのフリードリヒ・メルツ首相(写真なし)と会談した
写真=EPA/時事通信フォト
習近平国家主席は2026年2月25日、中国・北京の釣魚台国賓館でドイツのフリードリヒ・メルツ首相(写真なし)と会談した

製錬所が“手数料を払う側”に転落した異常事態

製錬手数料を申し受けるべき製錬所が、逆に鉱山会社にカネを払って原料の加工処理を引き受けている――。銅の製錬業界で、常識では考えられない逆転現象が起きている。米ブルームバーグが報じた。

製錬所は本来、鉱石を粗く砕いて銅分を濃縮した「銅精鉱」を鉱山会社から受け取り、金属に加工する対価として処理・製錬費(TC/RC)と呼ばれる手数料を受け取る。ところが昨年、長期契約によらないスポット取引ではこの手数料が1トンあたり<マイナス>60ドル(マイナス約9300円)まで急落した。

背景にあるのが中国だ。同国の製錬能力が急拡大し、世界の採掘量の伸びを大きく上回っている。限られた銅精鉱をめぐる争奪戦が勃発し、価格構造を破壊しつつある。

現状で影響は都度契約のスポット料金に留まるが、年次契約料金の基準となる「ベンチマーク」の相場への影響も懸念される。金属調査会社CRUグループのクレイグ・ラング氏はブルームバーグの取材に対し、「ベンチマークシステムの崩壊」を予測している。

英金融大手パンミュア・リベラムのアナリスト、トム・プライス氏は、中国が世界の銅精鉱供給の大部分を囲い込み、処理・製錬費の構造を破壊することで、事実上海外の製錬所を市場から締め出していると警鐘を鳴らす。

中国国内の業者も厳しい生存競争に苦しんでおり、限られたパイを奪い合う「内巻(インボリューション)」が起きているとの指摘もある。だが、逆風はむしろ中国国外の業者に強く吹いており、今年の処理・製錬費の交渉は「産業の残酷なサバイバルゲーム」の様相を呈しているとプライス氏は語る。

中国が世界の銅製錬の6割を支配

異常事態のそもそもの原因が、中国の圧倒的な市場支配力だ。

コンサルティング会社ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスの試算によると、鉱石から加工される精製銅の生産に占める中国のシェアは2025年に57%に達する。ロイターは、他国の生産がほぼ横ばいにとどまるなか、中国だけが前年比7.5〜12%の増産を続ける見通しだと報じた。