加工という産業の付加価値部分が中国に流出した形となり、欧州のリサイクル業者は本来手がけることができた原料を失う。ブラーギ氏は「(すでに欧州は)一次生産を失った。今度はアルミスクラップを失うリスクに直面している」と警告し、EUがスクラップ輸出の抑制に動かなければ、欧州のリサイクル産業は「壊滅的な衰退」に陥ると指摘する。
なぜ中国企業は高値でスクラップを買い漁れるのか。背景にあるのが政府の補助金だ。ブラーギ氏は「補助金による過剰生産能力が不公正な競争を生み出しており、中国企業ははるかに高い価格でスクラップを買う余裕がある」とも言及している。
危機感はアメリカでも高まっている。ロイターによると、米アルミニウム協会は10月、使用済み飲料缶の北米域外への輸出の即時禁止措置を政府に要請した。理由は国家安全保障だ。アルミニウムは軽量で強度に優れ、戦闘機や戦車の機体、衛星の筐体から自動車のボディまで軍民両方で使われている。その国内生産基盤を守るねらいがある。
同協会によれば、アメリカのアルミニウム産業は年間約400万トンもの原材料不足に陥っている。にもかかわらず国内スクラップの相当量が中国へ輸出され、加工後、完成品としてアメリカに戻ってくる。自給自足を達成すべきであり、その実現には「数年という年月、数十億ドルの投資、膨大な量の手頃なエネルギーへのアクセス」が必要だと同協会は訴える。
来年からアルミ不足の見通しも
現実的な問題として、こうした状況を短期間で覆すことが極めて難しい現状がある。
その一方で、アルミニウムは早ければ数年後にも供給不足に転じる見通しだ。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米金融大手シティグループのアナリストは昨年10月、鉱石から新規に製錬される一次アルミニウムの余剰流通量が今年まで急速に縮小し、2027年以降は約140万トンが不足すると予測している。
不足分は一次消費量の約2%にあたる。金属市場ではわずか数%の需給ギャップでも価格が大きく動くため、この規模の不足は深刻だ。エネルギー調査会社ウッド・マッケンジーのシニアリサーチマネージャー、ウダイ・パテル氏は同紙に対し、不足は2028年から約5年続くとの見通しを示している。
銅もアルミニウムも、供給逼迫を解消する道筋は見えない。新規鉱山は開発に十数年を要する一方、リサイクルの拡大にも巨額の投資が必要だ。あらゆる産業の基盤を支える、銅とアルミニウム。中国による資源支配という構造的問題に対し、世界はいまだに打開策を見いだせていない。


