延命治療を受け病院で最期を迎えるか、自宅で旅立つか。その選択に家族の協力は欠かせない。群馬県で緩和ケア医として活動する萬田緑平さんは「友人が86歳のお父さんを自宅で看取ったときは、子や孫に囲まれ、にぎやかな最期になった」という――。

※本稿は、萬田緑平『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

ベッドに横たわる男性の手を握る女性
写真=iStock.com/Marco VDM
※写真はイメージです

緩和ケア医が見守った家族の話

僕が診てきた中で、自分から「入院したい」と言う患者はこれまでほとんどいませんでした。転んで骨折しても黙っている。誰だってできるものなら、自分の家にいたいのです。

家に帰れば、家族がいる。一人暮らしの人だって、家にいれば友だちが来てくれるし、何より起きる時間、寝る時間、食事の時間などが自由です。

余命1週間と言われていたのに家に帰ったら、数カ月、すごい人は年単位で生きた人もけっこういました。

友人・家族の例も、驚きの連続でした。ブログで紹介したのですが、自宅で看取るための体制作りもわかるので、少し長いのですがご紹介しましょう。

友人・家族の奇跡の「6日間」です。

脳梗塞で意識不明になった父

〈1日目〉

友人の寿実子からこんな電話がありました。

「父が昨日脳梗塞こうそくで入院して、意識もないの。神経内科の医師からは回復しないと言われて、脳外科の医師からは手術をすすめられたんだけど断ったの。そしたら今朝、突然娘が『じいちゃんを家で看取ろうよ』と言い出したの。私もそうしたいと思ったので、他の兄弟姉妹にも連絡したら、みんな『そうしたい』と言うんです。がん患者じゃないけど、そんなことできますか?」

「家で看取ろう」と言い出した娘さん、寿実子の三女M子はなんと僕のファンで、ブログや著書も読んでくれています。M子と会った時に、患者さんたちの動画も見せると、感動していました。

僕はもちろん承諾しました。

「いいねえ。大丈夫だよ。実は今日、予定があいてるんだ。で、いつ退院させたい?」

意気込みを聞きました。これまでの経験から、こう聞いて、家族が「今日」と言ったら本気です。

「今日じゃダメ? 私、休みとったの。娘たちも時間つくれるし、誰かいると思うの」

寿実子はこう答えました。「おおっ、本気だ!」と、僕も臨戦態勢に入り、詳しい状況を聞きます。

父親のOさんは86歳。デイサービスを利用しながら一人暮らしをしていたそうです。今はK病院に入院中。退院させたら、自分の家に連れていくと言います。

「じゃあ、すぐ主治医に『今日退院したい』って伝えて。『萬田に手伝ってもらう』ってちゃんと言っといて。俺はK病院の患者支援センターの看護師に仲間がいるから、そこに頼んで今日退院させてもらえるようにする。家にベッドを入れなきゃならないね」

僕は、その他ケアマネジャーへの連絡や、訪問看護師の手配を請け負いました。