主語、動詞、目的語の3語だけで、驚くほどスムーズに話せるようになる。難しい文法や言い回しは一切不要のシンプル英会話スキルとは。

翻訳者として「失格」に 挫折を経て掴んだ真理

なぜ、日本人は英会話に苦手意識を持つ人が多いのでしょうか。様々な見解がありますが、私は「英語と日本語は言語構造がまったく異なる」ことが根本にあると考えています。私が提唱する「3語だけで魔法のように伝わるシンプルな英語」も、リアルな挫折体験を経て、たどりついたものでした。

中山裕木子『英語は3語で伝わります【どんどん話せる練習英文100】』(ダイヤモンド社)
中山裕木子『英語は3語で伝わります【どんどん話せる練習英文100】』(ダイヤモンド社)

私は昔から英語が好きで、学生時代のうちにTOEICは975点、そして英検1級を取得しました。大学卒業後に入社したメーカーでは、特技の英語を生かして技術分野の日英翻訳を担当することに。しかし、いざビジネスの現場で英語に向き合ってみると、会話はおろか、得意と自負していたライティングも含めて悲しいほどにコミュニケーションがとれなかったのです。

その後、特許事務所に転職。ここでは海外向けの電子・電気、機械の特許出願書の日英翻訳を担当することになりました。前職よりもさらに高い英語能力が求められる環境に身を置くことで、否が応でもスキルアップできるのではないかと考えての転職でした。

しかし、現実は甘くありませんでした。より厳密な正確性が求められる特許出願において、少しでも不明瞭な表現があれば、戻ってくる返事は「不明確拒絶」。これは出願内容を精査した結果ではなく、その英文のわかりにくさゆえに検討自体を拒否されたことを意味します。翻訳者として「プロ失格」の烙印を押されたようなものでした。

そんな失敗を何度も経験し、たどりついたのが「いかに端的に要点を伝えるか」という発想でした。難解な特許出願においてこそ、平易な英単語を明快に組み立てる能力が求められることに気がついたのです。

そして、シンプルな英文を追求すればするほど、浮き彫りになったのが、日本語と英語の文章構造の違いでした。日本語は基本的に「なる型言語」と呼ばれ、起きている現象を「受動的な変化」として表現することが多い言葉。「〜です、ます」など、英語でいうところのbe動詞や、受動態が中心です。

対して英語は「する型言語」とされ、「能動的な動作」で表現する傾向が高く、主に動詞を軸に文章を構成します。つまり、英文は「主語+動詞+目的語」というSVO構造が多い点が特徴であり、これこそまさに、私が提唱している「3語の英語」なのです。

【図表】「3語の英語」とは

be動詞を捨て動作を表す動詞を探す

「主語+動詞+目的語」の3語で構成される文章は、「誰が○○をする」という、「する型言語」における最もシンプルな構造になっています。言いたいことをこのフォーマットに落とし込めば、より明確にメッセージを伝えられるのが3語の英語の魅力です。

例えば「私の仕事は英語講師です」という文章を用いて考えてみましょう。日本語的な構造でそのまま訳すと、「My job is an English teacher.」となります。文法的に正しい英語ではありますが、「English teacher」に対する冠詞が必要となり、しかも母音の前なので、「a」が「an」に変化するなど、とっさに口にするには少々ハードルが高くなってしまいます。

これを、3語英語で言い換えてみましょう。動詞には、名詞「teacher」を変換して、「teach」を使います。すると、「I teach English.」と、非常にシンプルになりました。しかも、この職種の根幹を表す「teach」が2語目に出てくるので、聞き手にメッセージが早く伝わるというメリットもあります。