2月に開催された「大ヤンキー展」は大盛況だった。昭和ストリート文化や特攻服などヤンキーの世界観を体験できる室内展示イベント。現地に足を運んだ漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんは「コンプライアンスやハラスメントまみれで息苦しい現代に、自由でワイルドで本能的に生きる昭和ヤンキーに憧れ、元気づけられる人が多い」という――。

「大ヤンキー展」に令和人が心酔する理由

「ほら、ウンコ座りはこうやるんだぞ」
「え〜お父さんダサい〜」

さいたま市の大宮マルイで2月半ばまで開催された「大ヤンキー展」の会場は、想像以上に賑わっていました。中には元ヤンキーのオーラを漂わせるファミリーも。父親に誘導されて、フォトスポットでヤンキーのウンコ座りポーズをとった小学校低学年の息子に対し、「ヤンキーはピースしないから」と、お母さんの指導が入ります。それを見て、1970〜80年代に盛り上がりを見せたヤンキーカルチャーが、令和の今も連綿と続いていることに不思議な感動を覚えました。

大ヤンキー展会場で息子にヤンキーの作法を教えるお父さん
イラスト=辛酸なめ子

昨今のヤンキーはマイルド化していると言われますが、それだけ裾野が広がり、日本人のヤンキー率は潜在的にかなり高いのでは、と思わされます。

現に映画やドラマなどヤンキーコンテンツは一定の需要があり、最近ではMEGUMIプロデュースの恋愛リアリティ番組『ラヴ上等』がNetflixの視聴者ランキングのトップを独走。早くもシーズン2の制作も決定しています。

元ヤンだったというMEGUMIが「感情の表現や伝え方、日頃のコミュニケーションが複雑化する現代、ド直球なキャラクターが必要」という思いを込めてプロデュース。

ヤンキーの男女が共同生活し、お互い威嚇し合いながら恋愛ドラマを繰り広げます。ちょっと目が合っただけで喧嘩が勃発したり、「日本刀ある?」といった地上波では流せない物騒な言動が飛び出したり、タトゥーや刺青アピールが激しかったり、理性やモラルを超越した展開が刺激的です。

コンプライアンスやハラスメントまみれで息苦しい現代、自由でワイルドで本能的に生きる彼らに憧れが集まっているようです。観ているうちにいつの間にかヤンキーにエンパワーメントされるドラマですが、この「大ヤンキー展」も今の日本人を元気づける展示だと感じました。

炎上しないように、コンプラに抵触しないように、当たり障りのない言動を心がけている現代人に喝を入れる内容です。ちなみに会場には『ラヴ上等』出演者で上半身のタトゥーの「おとさん」こと乙葉のサインもあり、彼女のSNSを見て来たという女性客もいたようです。