ニデック不正会計問題の背景には、創業者・永守重信氏の「強いプレッシャー」があったという指摘がある。経済評論家の鈴木貴博さんは「プレッシャー経営自体は、GAFAMやテスラなど世界的成長企業にも共通するもので、決してめずらしいものではない。問うべきは、なぜその理念が今の日本で通用しなくなったのかという点である」という――。

「カリスマ経営は時代遅れ」なのか

ニデックの創業者・永守重信氏が経営から退くことになりました。一連の不正会計問題についての責任を問われる中での引退劇です。

その永守会長はつい5年ほど前までは世の中では名経営者としてもてはやされていました。

M&Aによって同業他社をつぎつぎと買収し経営再建をしていく手法で一代でニデックを時価総額8兆円企業へと押し上げました。

平成の時代、なぜ永守流が通用し、世間からもてはやされたのでしょうか? そしてなぜ令和になって永守流は通用しなくなったのでしょうか? カリスマ経営者が通用した時代背景を分析したいと思います。

記者会見する日本電産の永守重信会長=2020年2月4日午後、京都市内のホテル
写真提供=共同通信社
記者会見する日本電産の永守重信会長=2020年2月4日午後、京都市内のホテル

株主の損失はすでに1兆円超

本題に入るまえにひとつはっきりさせておきたいことがあります。

不正会計というのは大企業が絶対にやってはいけないことです。決算書を粉飾して銀行から有利に資金を調達する手口の詐欺ですが、振り込め詐欺とはケタ違いの被害者を生む犯罪です。

ニデックの場合、不正会計が問題になって以降、株主は1兆円超の損失を被りました。永守前会長に責任の一端があるのは間違いないのですが、ひとりでできる犯罪ではありません。組織が関与しないとできない犯罪です。

その観点でニデックの不正会計は現在も進行している事件です。

その不正会計がいつごろから始まって誰が関与してきたのかはこれからの責任調査委員会の手で明らかになると思います。

今回、取り上げたいテーマは不正会計が始まる前の旧日本電産が永守流の経営によってイチ製造業から日本を代表する巨大企業にまで上りつめた理由です。

なぜそれができたのか? そして、なぜそのやり方が通用しなくなったのか?

3つの視点で明らかにしていきたいと思います。

視点1:道がつながっていた

まず最初の視点です。永守氏の経営手法とはいったん離れて、旧日本電産の経営環境を眺めながら、なぜ成長できたのかを考えてみます。

そこでわかることは京都のニッチ製造業者が世界企業になるまでの「道」が、後から眺めてみればつながっていたということです。