人口減少に苦しむ地方自治体では、「人が来ない」「予算がない」が共通の悩みになっている。一方で、北海道・東川町は、人口8600人規模にもかかわらず、全国から移住者が集まり続けている。他の自治体と一体何が違うのか。ノンフィクション作家・神山典士さんの著書『地方が溶ける』(光文社新書)より、その実像を紹介する――。

※本稿は、神山典士『地方が溶ける』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

移住したくても住めない「東川町」

北海道上川郡東川町は、「街の住みここちランキング2025」(大東建託株式会社「賃貸未来研究所」)において、東京都中央区を抜き、2年連続で全国1位に選出されている。移住希望者が住宅用地を探しても、適した不動産を購入するのも賃借するのも難しいほどの高倍率だ。

銀座
写真=iStock.com/SeanPavonePhoto
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なぜこのような町が成立したのか? 町民たちを支えているのは何なのか? 私はこの町の「魅力」を支える「裏側」を知るために、東川を訪れることになった。

最初に東川町を訪ねようと思った理由は、「地域おこし協力隊」だった。2009年に総務省の事業として始まり、約15年間が経過していまでは全国で約7200人が隊員として活躍しているこの制度。

都会から地方活性化の人材を地方都市に呼び込み、3年間は国の予算で自治体が採用できるという仕組みだ。人口減少や働き手不足に悩む全国の自治体にとって、国の予算で働き盛りの地方創生人材を確保できるこの仕組みは大歓迎のはずだ。

【図表1】人口に協力隊員が占める割合
出所=『地方が溶ける』(光文社新書)

その採用データを見ると、東川町はここ10年間、全国の自治体の中でトップクラスの採用人数を誇っている。2023年度は76人、24年度は80人。いずれも全国トップの採用数だ。2023年(令和5年)度の全国の自治体の協力隊員の採用数上位は、図表1のようになっている。

役所の思い込みが田舎のチャンスを潰す

ところが、これらの積極採用自治体がある反面、採用に消極的な自治体も少なくない。私が二拠点生活(都市生活と田舎暮らし)を経験した埼玉県ときがわ町では採用は2名。隣町の越生おごせ町でも採用は3名だ。全国的に見ても、協力隊員の数は約7200名で、約1164の自治体の平均は6.1名ということになる。

ちなみに私はときがわ町と越生町で役場の担当者に「なぜ採用数を増やさないのか?」と聞いたことがある。すると両方の役場の担当者は共に、「採用しても、採用任期3年間が終わった後で隊員がこの町に定住してくれるとは限らないから」と答えた。

つまり両方の町の担当者は、「任期が終わった協力隊員はこの町に定住してなんらかの仕事を続けないといけない」と思っている。それができないのに採用人数を増やせないという論理だ。

けれどこの点を総務省OBの元担当者に確認すると、「そんなルールは決めていません。隊員たちにお願いしているのは、住民票を移すこと。自治体にお願いしているのは、首長から委嘱することと活動をホームページで公開すること。任期後の定住は、採用条件ではありません」ということだった。