協力隊員が着実に人口を増やしている

「公務員試験を受けもしないで国から3年間お金がもらえる」という嫉妬に近い感情が周囲から生まれて、いつのまにか「任期満了後の定住」が必須条件のようなイメージになってしまった。その思い込みが一人歩きして、協力隊採用を尻込みする自治体が多いのだ。東川町は、そんな思い込みに左右されていない。

協力隊員の任期終了後、すなわち4年目の動向を調べてみると、東川に定住しているのは4割弱しかいない。町の担当者に聞いても、「4年目の定住率はあまり気にしていない」と言う。とはいえ毎年80人近い協力隊員を採用し、その3年後には4割弱が定住するのだから、毎年約30人は人口増になっている。

それが10年続けば、単純計算で約300人の人口増だ。つまり人口8600人の町の3~4%が協力隊OB・OGの移住者ということになる。この数字は大きい。4年目の定住率にこだわって採用人数を増やさないことの無意味さが見えてくる。

ところが――。東川町に取材に来た当初の私がそんなことにこだわっていると、担当してくれた東川町役場企画部総務課企画財政室の柳澤奨一郎さんは、1通の資料をもってきてこう言った。「我が東川町が地域おこし協力隊員を80名雇っているのは事実です。でも注目してほしいのはその数よりも、それを支えている我が町の財政事情です」

町の予算は「44億円→166億円」に

その資料には東川町の人口と「一般会計予算」の推移が書かれていた。東川町の人口は8600人。それに対して2024年(令和6年)度の一般会計予算は「166億円」とある。

その時私は、他の自治体の一般会計予算額を知らなかったからこの166億円の意味がわからなかった。けれど柳澤さんはこう言って胸を張った。

「一般会計予算額は自主財源であるその自治体の税収にプラスして、国からの交付金なども加わるので、人口規模や面積、自然条件、地理的条件などによって決まってきます。一般的に言って、東川の規模での標準財政規模は約47億円といわれています。実際に2003年(平成15年)度の予算額は約44億円でした。

ところが約20年後の2024年(令和6年)度にはそれが約166億円と3.8倍の規模になっている。これは東川がいろいろなことに挑戦して、国や道からも評価を受けて交付金や補助金助成金などを得て、財源確保に努めてきた結果だと考えています」

人口8600人規模の町で一般会計166億円という巨額の予算を確保している東川町。なぜこんな奇跡が実現しているのか、簡単にその町づくりの歩みを振り返ってみよう。東川町が、現在では日本国内のみならず世界的にも有名になった(香港では日本で一番有名な町の一つに東川があがるという)理由は、1985年に「写真の町宣言」を出したことが大きい。

東川町は写真の町として知られている
筆者提供
東川町は写真の町として知られている