なぜトヨタは、世界販売台数で6年連続首位になれたのか。政治学者で、群馬県立女子大学非常勤講師の伊藤隆太さんは「中国EVは値下げ競争で利益を削り、EVへ急旋回した欧州勢も巨額の費用計上を迫られている。一方、トヨタはかつて『EVに出遅れた』と批判を浴びながら、内燃機関を手放さなかった。豊田章男氏が5年前に語った『敵は炭素であり、内燃機関ではない』という警告は、いまの自動車市場の現実を正確に言い当てている」という――。
2025年12月5日、静岡県裾野市にあるトヨタの「ウーブン・シティ」で開催された新型スポーツモデルのワールドプレミアで、スピーチを行うトヨタ自動車の豊田章男会長
写真=AFP/時事通信フォト
2025年12月5日、静岡県裾野市にあるトヨタの「ウーブン・シティ」で開催された新型スポーツモデルのワールドプレミアで、スピーチを行うトヨタ自動車の豊田章男会長

新車の4台に1台がEVになったのに

2026年、世界の電気自動車(EV)市場では、「何台売れたか」だけでなく、「売って儲かるのか」「作り続けられるのか」が前面に出た。

中国では新エネルギー車(NEV)が巨大市場に育つ一方、値下げ競争が収益を削る。欧州勢は電動化投資と中国市場の変化に挟まれ、巨額費用の計上を迫られた。トヨタは2025年の世界販売で6年連続首位を維持した。なぜ「EVに出遅れた」と揶揄されたトヨタが、いま最も現実的な戦略を持っていたように見えるのか。

崩れ始めたのは、EVそのものではなく、「EVだけで勝てる」という楽観である。答えは、豊田章男氏が語ってきた「敵は炭素であり、内燃機関ではない」という一言にある。

2026年5月20日に公表された国際エネルギー機関(IEA)の「Global EV Outlook 2026」によれば、IEAの集計対象はバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)である。

その世界販売は2025年に2000万台を超え、新車の4台に1台へ達した。需要は引き続き伸びている。ただし、成長の質は変わった。価格、航続距離、充電時間、寒冷地性能、下取り価格、補助金の有無が、理念よりも重くなった。初期導入層が一巡すれば、購入者は環境意識に加え、月々の支払い、通勤距離、駐車場の有無で選ぶ。

欧州にも変化は表れている。2026年1月27日に公表された欧州自動車工業会(ACEA)の統計によれば、2025年の欧州連合(EU)新車市場でBEVのシェアは17.4%だった。一方、ハイブリッド車(HEV)は34.5%で、最も選ばれた動力源となった。